イギリス黄金期のミステリ。
1935年の作品。
月夜の晩に、ロンドンから離れた村の広場で、紳士の死体が発見された。
昔の晒し台に足を突っ込んで状態で。
アントニア(トニー)というヒロインのイメージが強いので、最初はヒロインもののミステリ、コージー系と分類しましたが…いや?
探偵役は、シリーズ物(1作目)としては、ハナサイド警部。
今回のホームズ役は、アントニアの従兄で弁護士のジャイルズが活躍という。
警部とジャイルズが親しくなってしまうのは、現代ならアウトだろうな~。
恵まれた育ちだが大金持ちというわけではない兄ケネス・ヴェレカーと妹のアントニア。
腹違いの兄アーノルドが、ほとんどの財産を継いでいたのだ。
ケネスは画家で才能もあるが、年中ふざけたことばかり言っていて、嫌っていた異母兄の殺人事件にも動じず、財産を継げることを喜び、仮定として様々な推理を繰り広げる。
浮世離れした態度に、周囲は呆れたり戸惑ったり煙に巻かれたり。
妹のアントニアもぶっ飛んでいるが、兄よりは無邪気で率直。
しかし婚約者に疑いがかかっても、殺したとしても気にしないという始末。
アントニアは異母兄に婚約を反対されたために怒って車で駆けつけ、誰もいなかった別荘で一人でくつろいでいたのだ。
つまり現場の田舎町にいたわけだが。
ほかにも次々に怪しい人物が登場。容疑者には事欠かない事件。
果たして真相は?
ミステリ読みなら難しくはないけど、本格物として十分楽しめます。
同時期のセイヤーズやクリスティにちょっと似た部分があり、古きよき時代を思わせ、ゆったりしていてユーモラス。
いかれた連中のお喋りで笑わせるあたりは、クレイグ・ライスも思わせます。
わかりやすくて、ロマンス物作家としても有名だというのも納得。ヒストリカル・ロマンスの草分けだそうです。
- 感想投稿日 : 2011年7月27日
- 読了日 : 2011年7月27日
- 本棚登録日 : 2011年7月27日
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