アーサー王宮廷物語 3

著者 :
  • 筑摩書房 (2006年4月1日発売)
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本棚登録 : 44
感想 : 4
5

感動的だった。
ただ軽い気持ちでアーサー王伝説を知りたいと思って手にとったアーサー王宮物語全3巻、それは悲しい物語だったけれど、同時にとても優しい物語だった。

現代に育った僕らには親族という認識は希薄だ。
しかしアーサー王を含め円卓の騎士たちは本当に親族を大切にし、血を大切にした。
そして、アーサー王を裏切る形となってしまったランスロットさえ、アーサー王を心から敬愛し、血を分かち合っていなくとも強い絆で結ばれていた。最後まで。
アーサー王は自分を裏切ったランスロットを許し、王妃を許し、そして忠義を尽くしてくれたガウェインに出来うる限りの最大の愛を持って接した。
例えガウェインの眼が曇ってしまっていても、彼を決して見限らずに妥協点を探り、そしてそのために心を痛めた。

ひかわさんの描くアーサー王は慈愛に満ちた神のような存在で、戦場というのが似合わない人だった。
彼ほどの平和主義がいただろうか?
彼はただただキャメロットの幸福と安寧だけを願っていたのに、そのためにあらゆるものを我慢したのに
結局、彼を取り巻く騎士たちの心に振り回され彼は全てを失った。
個々の気持ちを思んぱかるあまり自分をないがしろにさえした。

それでも全てを許し、死さえ受け入れるアーサー王は立派だった。

ひかわさんの描くアーサー王宮物語は実際のものと細部が違っていた。
けれど、この物語は愛に満ちていて素晴らしいものだった。
彼女の目にはアーサー王宮はこのように映ったのかもしれない。

久しぶりに良い本に出会えた気がする。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 児童文学
感想投稿日 : 2010年10月26日
読了日 : 2010年10月25日
本棚登録日 : 2010年10月26日

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