八雲立つ出雲八重垣妻ごみに八重垣作るその八重垣を
「古事記」
「八雲【やくも】立つ」は「出雲」にかかる枕詞【まくらことば】。また、「八隅【やすみ】しし」は「わが大君【おおきみ】」にかかる枕詞である。「古事記」や「日本書紀」の数字を見ると、みごとに「八」ばかりが登場するので、以前から、その「八」の意味が気になっていた。
確かな答えとは言い切れないが、一つのヒントを、大阪府立大学に事務局がある「形の文化会」編の事典から得たので、紹介したい。図版が豊富で、眺めるだけでも楽しめる事典である。
よく知られた掲出歌も、「八」に縁の深いものだ。「八」つの頭と尾を持つ「八俣【やまた】の大蛇【おろち】」を退治したスサノオノミコトの歌で、「八重垣」は宮殿の意味。出雲の国で、妻と住むために宮殿を作ったときの感激の言である。
さて、「八」の数字は、天皇陵に「八角墳」が多いなど、むしろ「八角形」という形のほうに大きな意味があるそうだ。法隆寺の夢殿も、正八角形である。
近現代ではどうだろう。「八」の字は「末広がり」なのでおめでたい、とよく言われるが、この事典によると、それは誤認らしい。末広がりとは、扇のように上に開くものを指すのである。
しかも、近代国民国家となってからの日本では、「八角形」の墳墓や建築はさほど重要視されてこなかった。にもかかわらず、戦時下には、「八紘【はっこう】一宇」などのスローガンで「八」が復活、強調されていた事実もある。
難問…。「八」研究会、求む研究員!
(2015年2月22日掲載)
- 感想投稿日 : 2015年2月22日
- 読了日 : 2015年2月22日
- 本棚登録日 : 2015年2月22日
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