プロテスタンティズム - 宗教改革から現代政治まで (中公新書 2423)

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  • 中央公論新社 (2017年3月21日発売)
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「神聖ローマ帝国」は、ローマ教皇により戴冠された皇帝が支配する帝国、という意味です。

本書では、中世のドイツ、すなわち神聖ローマ帝国が、ローマ教皇により搾取されていたこと。それが、ルターの宗教改革、プロテスタンティズムの誕生を可能とした素地を作っていたことが、歴史的背景からわかりやすく説明されています。

北部ドイツで信者を獲得したプロテスタンティズムはやがて保守化し、今日のドイツではカトリック(主に南部地域)と並び政治と深く結びつき、保守層を形成していきます。

一方、保守化したプロテスタンティズムを嫌ったリベラル派であるピューリタン達は、国家からの信仰の独立と自由を求め、アメリカ合衆国にわたり、政治と宗教の分離を勝ち取ります。

これが、自発性と自由競争を基本理念とする米国の精神として今日でも体現されている、という筆者の視点には説得力があります。

「プロテスタンティズムは、自分自身に拘束されない作法を持っている」すなわち、自分自身からも自由である、というリベラルな考え方の起点と言えます。

昨今よく言われる多様性の重視、といのうのは、ルターが中世にローマカトリックの在り方に疑問を呈した「95か条の提題」から生まれた、とも言えるのでしょうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史・政治・地政学
感想投稿日 : 2018年11月10日
読了日 : 2017年7月1日
本棚登録日 : 2018年11月10日

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