スペインを追われたユダヤ人 (ちくま学芸文庫 コ 6-1)

著者 :
  • 筑摩書房 (1996年6月1日発売)
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感想 : 3
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「スペインを追われたユダヤ人」という題名を見たら、すぐに世界史で習うあの1492年のレコンキスタの完成を思い浮かべるだろう。宗教的再征服は単に異邦人(ムスリムやユダヤ人)を追放しただけではなく、その地に留まらざるを得なかった異邦人に改宗を強制した。普通、この題名からすれば追放され、北アフリカの地へと離散していたユダヤ人に焦点を当てていると思うだろうが、本書で取り上げられるのは、そのスペインという地に改宗しながらも残った人達である。彼らは改宗後も異端的伝統を保持していたため、キリスト教徒から異端視され軽蔑から、彼らが食すことのできない「豚」(スペイン語でマラーノ)の名で呼ばれ蔑まれた。そのマラーノを追った著者によるフィールドワークをまとめ上げたのがこの本である。

改宗で当地に残ったユダヤ人たちが、なぜ「追われた」という言葉に繋がるのか不思議に思うかも知れないが、本書の狙い所はまさにそこにある。地理的な意味で「追われた」ユダヤ人の追放の歴史は、このスペインの地のレコンキスタにおいて、それ以上のものをもたらした。そこで起きた彼らの内面を司ってきた宗教性もまた追われていく。だが、追われながらもどこかで彼らが保持し続けたその伝統に著者は惹かれ、弁証法的に存在したその「マラーノ性」を探る旅に出る。


全体的な感想としては、歴史を知りながら旅行をするとこんなに重厚に都市が見えてくるものなのだと感動しました。読みやすいし、非常に勉強になるネタが溢れています。オススメ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: その他
感想投稿日 : 2011年8月2日
読了日 : 2011年8月2日
本棚登録日 : 2011年7月9日

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