英語化は愚民化 日本の国力が地に落ちる (集英社新書)

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  • 集英社 (2015年7月17日発売)
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今政府や財界が進めている社内や大学での英語化は口ではグローバル化を唱えてはいても、実際は世界史の流れに逆行するものであり、国民を一部のエリートと愚民に分割させるものだと言う。というのは、西洋ではかつてラテン語が支配者の言語であり、知識や文化はごく一部のエリートのものであった。ところが、宗教改革によって現地の言葉に聖書が訳され、現地の言葉によって多くの豊かなものが生み出されていった。これはグローバル化と逆の現象である。そこには翻訳があり、幕末から明治にかけて日本人が多くの近代語を生み出したことは、国民を二極に分けずにすみ、それゆえ日本が強くなっていったのだと言う。なによりも、創造性の源泉は、ノーベル賞を取った益川さんのように母語での思考が基礎になっている。第二言語である英語がいくらうまくなっても、そこから豊かな創造性を生み出すことは困難だ。ましてや、英語がうまくなればなるほど、英語母語話者の思考に近づき、日本人らしさが失われていく。著者は言語学者ではなく、政治学者で、それゆえ、より広い観点からグローバル化や英語使用に問題を提起している。ぼくは同僚の中国語の先生から薦められ読んだが、英語習得に励む学生にもぜひ読んでほしい本だ。

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感想投稿日 : 2015年12月6日
本棚登録日 : 2015年12月6日

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