日の丸女子バレー ニッポンはなぜ強いのか

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  • 文藝春秋 (2013年6月25日発売)
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日本の女子バレーチームが、なぜ国際大会で体格差のある競合他国と、常勝ではないにしても、ほぼ互角の戦いをできるのか(なぜ、男子は互角になれないのかも少し)が、よくわかった。

監督の役割というのは、個人戦、団体戦、どんなスポーツであれ、その競技経験がない身にとってはどんなことを考え、どんな指導をしているのか、というのはよくわからない。TVやスポーツ新聞などのメディアは読者の興味を煽情することのみが目的で表面的なこと以外、何も伝わって来ない。

かたや、この本は、歴代の監督、選手らへの直接取材を行い、インタビューの言葉の中から、それらをわかりやすく読者に示している。そして、それらは初めて知ることの多い、驚くばかりの執念、あるいは本書中にも伝わっているが、狂気とも呼ぶべき、日本女子バレーが抱えてきた宿?、業である。

その点において、例えば柔道や水泳、体操、など日本がかつてお家芸としてきた競技にはそういったものがみな存在するのかも知れない。しかし、今回のリオのオリンピックで、それらの競技からはそういうものが伝わっては来なかった。やはり女子バレーだけから、長く受け継がれて来て、これからも襷のように受け継がれていくべく、定めづけられているもの、を強くはっきりと感じた。残念ながらメダルにはまた届かなかったが故に、感じたのかも知れないが。

東洋の魔女と言われたチームが活躍した東京オリンピック。私はまだ2歳だったが、家に特集の雑誌があったので、少し大きくなってからよく眺めていた。アポロの月着陸や新幹線などと同様、東京オリンピックは日本の復興と成長の象徴として、幼い心に刻まれたものの一つ。

しかし本書を読むまで、大松監督のスパルタ練習のみが金メダルの理由だろうぐらいに思っていた情報が、ほんの表面的であることを知った。どんなチームだったのか、一人ひとりが何を考えていたのか、興味がある人はこの本をぜひ読むべき。

また、その後の日本チームが、それぞれの監督によって、どのような戦略をもとに召集され、その時のキーとなる選手たちの思いなどが、時間を追って、また対戦相手国らと対峙する状況も含めて、詳しく描かれているので、懐かしい選手名などが出て来て、なかなか楽しい。

女子バレーは、一時期人気を落とし、どん底の状況にあったが、近年また実力がつき、TVなどのメディアでも目に触れることが多いので、その時どきの状況や覚えている選手の記憶をなぞりながら読むことができる。

リオは残念だったが、この本を読めば、まだまだ女子バレーは上を目指せるはずだと応援したくなる。もちろん男子バレーも忘れてはいけないが、まずは女子、東京オリンピックでは一層の活躍を期待したい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年4月28日
読了日 : 2016年8月25日
本棚登録日 : 2017年4月28日

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