THE CULTURE CODE ―カルチャーコード― 最強チームをつくる方法

制作 : 楠木建 
  • かんき出版 (2018年12月5日発売)
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感想 : 50
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今までいろいろなビジネス書を読んできたが、本書は間違いなく自分の中でトップ3には入る良書。

「良い組織」を作るにはどうすればよいか?
誰しも、「風通しを良くする」、「なんでも言い合える雰囲気にする」、「家族的な雰囲気にする」。
こんな言葉を何となく誰もがイメージすることはできるが、どうすればこれを実現できるかは、誰も教えてくれない。
本書では、このぼんやりとしたイメージを実際に数多くの成功しているチームへのインタビューや実験を通して、実際にどうやったら良いかが誰にでも分かりやすく具体的に述べられている。

著者は「最強のチーム」つまり、「良い組織」を作るには、本書で以下の3つのことを実践しろと述べている。
1 安全な環境をつくる
2 弱さを共有する
3 共通の目標を持つ

特に最初の「1安全な環境をつくる」の中で述べられている「腐ったリンゴ」の実験は、非常に興味深かった。
この実験は、ある組織に一人の人物が送り込まれる。この人物は組織内で雰囲気を壊すようなありとあらゆる態度や言動をさりげなく行う。
例えば、会議の場で、「この会議、かったるい、やってられないよ」というような言葉を他の参加者にやっと聞こえるくらいの小声で言ったり、発表者を馬鹿にしたような態度を取る。さらに発言を求められられても、その場で取り繕ったような適当な発言をし、会議の雰囲気を壊す。(実際に、『こういうことする人、いるいる!』と読者の誰もが思うようなことだ)
このような「腐ったリンゴ」が一人でもいると、どんなに優秀な人が集められた組織であっても、生産性が落ちてしまう。これは、その人物の態度や言動が他の人の気持ちに影響し、「あんな感じでいいんだ」というイメージを他の人間も持ってしまい、潜在的に真面目に仕事に取り組もうという意識が無くなり、結果として組織全体の生産性が落ちてしまうのだ。

この「腐ったリンゴ」作戦は、ほとんどの組織で成功した(実際に生産性が落ちてしまった)が、ある組織だけは上手くいかなかった。
この生産性の落ちなかった組織には、「腐ったリンゴ」の言動を中和してしまう人物「おいしいリンゴ」がいたからだ。
この「おいしいリンゴ」は、カリスマ的チームリーダーでも、組織のエースでもなく、ごく普通の人物であった。ただ、この「おいしいリンゴ」は「腐ったリンゴ」が悪意を持った言動をすると、すかさず「君はそう思うんだね。僕はこう思うんだけど、(他の人物を指して)あなたはどう思う?」と「腐ったリンゴ」の悪意を持った言動が周りの人に伝染しないようにする。
「腐ったリンゴ」はさらに悪意をばらまこうとするが、ことごとく「おいしいリンゴ」に中和され、最終的には、「腐ったリンゴ」も「おいしいリンゴ」に協力的な気持ちになってしまったという。

この「おいしいリンゴ」がやっていることは、特別なスキルを持っていなければできないような難しいことではなく、あくまでも「この職場は安全である、何を話してもいいんだよ」というメッセージを周りの人たちに与えるだけだ。しかし、このような「この職場は安全である」というイメージを与えることこそが「良い組織」を作る為には非常な重要なことなのだ。

この「腐ったリンゴ」の実験の他のにも、数多くの実例が述べられ、さらに「2 弱さを共有する」や「3 共通の目標を持つ」にも目から鱗が落ちるインタビューや実験結果が満載されている。

本書で登場するのはGoogle、デザイン企業IDEO、ピクサー、アメリカ海軍ネイビーシールズ、全米プロバスケットボールのサンアントニオ・スパーズなど、高度なチームワークを誇る組織や、さらにコメディ集団のアップライト・シチズンズ・ブリゲード、悪名高い宝石泥棒集団(ピンクパンサー)も登場する。こういった最強チームに対する取材内容だけでも本書は一読の価値がある。

本書は、いわゆるハウツーものでも、四番打者を数多く集めて運用するようなマネジメント本でもなく、「組織内で働く人たちがどうすれば100パーセントの力を発揮できるようになるか」を論じている組織論だ。
本書は、ビジネスマンだけでなく、あらゆる組織内で生活する人たち全てに役立つ本だと思う。今いる組織(もしかしたら学校、あるいは家庭であったとしても)がもっと良くならないかな?と考えている人には、ぜひ手に取ってみて欲しい1冊である。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ビジネス
感想投稿日 : 2019年5月27日
読了日 : 2019年5月25日
本棚登録日 : 2019年2月13日

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