2巻に入って、ますます少女漫画らしさに拍車がかかったような気がする。
不倫と失恋を経て愛されることに臆病になったアラサー女史と、彼女の祖母(!)に懸想していた50代男のちぐはぐな恋愛…と書けば、なんだかその設定に妙に生々しいものを感じるけれど、開けてみれば何のことはない、「こんなことがあったら良いな」という定番通りの乙女の夢に満ちた恋物語だった。
それでも、作者の独特の台詞回しとリズム感がぐいぐい読ませてくれる。何よりキャラクターがいい。30も半ばを過ぎて、「愛されるのが怖い」だなんだとぬかすつぐみの「幸せウツ」病には苛々とさせられるが、お相手の教授とのやり取りを通じて、終いにはそんな彼女の弱さがどうしようもなく愛おしくなってくるのは不思議だ。
海江田教授の柔らかい方言(京都弁?)も、物語全体にしっとりとした艶のようなものを添えている。哲学界の著名人で、女子大の教授で、見かけは品の良い紳士のくせに中身は押せ押せな中年と、かえって食傷気味になるほどの少女漫画的ステイタスの持ち主な彼だが、加えてこの2巻ではどうやら難しい生い立ちの持ち主らしいことまで明らかになった。大人のために描かれたラブストーリーという印象の強い作品ではあるが、この華々しい教授のキャラは、むしろ10代の若い読者にも受けるものかもしれない。
ただ、2巻でもうお披露目・結婚にまでこぎつけたのは(まだ正式な手続きこそ取っていないものの)驚いた。ほのぼのとした田舎の日常生活を丁寧に描く一方、大事なエピソードで「ここもうちょっとページ割かなくて良いの!?」と思わせる、作者の絶妙なテンポ感がしかし逆に心地良くも感じられる。
既にうっかり浮気沙汰に陥りかけた二人ではあるが、残された時間もあまりないことだし(…)教授には今後是非とも頑張ってつぐみを幸せにしてもらいたい。そして本人にも幸せになって欲しい。お互い報われない恋を経て、幸せは二人で作っていくものだと、ようやく見つけた伴侶と共に穏やかに時を重ねていって欲しい。
関係ないが、タイトル「おとこの一生」こそが教授にとって最大の死亡フラグではないのかと指摘されて以来、教授の今後が気にかかって仕方ない。まさか作者は本当に彼の「一生」を描き切るつもりなのだろうか。次の巻辺りで、彼が「実はぼくはね…」と無慈悲な宣告を口にする展開が訪れないことを、今から切に祈っている。
- 感想投稿日 : 2010年1月1日
- 読了日 : 2010年1月1日
- 本棚登録日 : 2010年1月1日
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