すごい、すごすぎる。本当にすごいと言葉も出ない。読み終えてしばらく経つのに、まだ心臓がドキドキしてる。ストーリーを描くと陳腐に思えるだろうに、銀幕の中で映画を見てきたようだ。千円のタイムトリップ。周りが見えず聞こえずただただ夢中で読んでいた。部屋にいるときに気になっていた空気の音さえも気づかなかった。
どん底の賤しさとも洗練された空気とも喜怒哀楽の感情とも違う。ただそこにあるだけなのだ。なるべくしてなったともまた違う。なったからなって、そこに運命も必然もなくて、ただ思い通りに、自分でも分からないまま思ったように動いただけ。愛なんてきれいごととして飾られた言葉は似合わないのに、そこに確かに愛があった。クラスメイトの血塗れ死体に溢れた体育倉庫。外には警察。テレビや週刊誌を通して見たらただの悪役。うまい具合に蔑まれ、怖がられ、侮蔑され、好き勝手な感情をもたれる存在。ああ、なのに、そこには確かに愛が存在したのだ。本当にいつまでも待っていられるかは分からない。その瞬間には永遠と呼べる愛が存在した。
私はどうやら一本芯の通った人物が好きらしい。たとえそれが世間から見て歪んだ哲学でも。
虚淵玄の解説も納得の会心作。中央東口さんのシャープで銃器や臓物が映える絵もよく合ってます。どこぞの訳知り顔の評論家にとやかく言われたくないが、もっと読まれても良い本。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ライトノベル
- 感想投稿日 : 2013年10月26日
- 読了日 : 2013年10月26日
- 本棚登録日 : 2013年10月26日
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