ゴッホの手紙 下 テオドル宛 (岩波文庫 青 553-3)

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なんとかして当初の目標であった「アムステルダム訪問前に読了」を達成。それなりの満足感はあるも同時に端折った感も否めず。願わくば腰を落ち着けてじっくりと読みたかった。

彼の最終章を読みながらテオの妻の登場がほぼないことにふと気づく。司馬さんの「街道をゆく オランダ紀行」においてはその彼女の功績を褒め称えていた故に、一体それはどこからきたのだろうと読了後にそちらに立ち戻って拾い読んでみると、なるほど納得、彼女のその後の功績はフィンセントの知るところではなく、兄の死後数ヶ月で後を追う弟テオとの結婚生活が二年間に満たなかったという記述からもこの書簡集には出てくるはずがない。ただその非常に短い期間の中にフィンセントがテオと「ジョ」ことその妻ジョハンナに対して何度も何度も繰り返す祝福、幸福祈願の言葉の数々が、後の彼女の「この書簡を後世に伝え、この彼らの情熱を未来で昇華させるのだ」という信念の源となったことを考えると、愛情という種は蒔けるときに常に蒔いておきさえすればきっと育つものなのだという希望的観測を与えてくれる。それはフィンセントの作品が後に高額で取引され、投機の対象にまで成長したとかいったようなことを喜ぶ意味ではなく、その愛情が司馬遼太郎にまで伝播し、「彼が祖国に残した功績は画家としての側面のみではなく、文学者としての側面というものも大きいのだ」とまで言わしめていることを喜んで言っているのである。

再読もしたいし、その他の関連書にも手をつけてみたい。

ま、でも今のところは空港から彼の美術館までの順路を頭に入れることに集中するとするか。

感謝。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年2月4日
読了日 : 2012年12月27日
本棚登録日 : 2023年2月4日

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