おカネが変われば世界が変わる: 市民が創るNPOバンク

制作 : 田中優 
  • コモンズ (2008年11月1日発売)
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銀行に預けているお金は、国債に投資されて、どこかの利用者が少ない橋やトンネルに化けているとしたらどう思うだろうか?

「自分のお金を自分の目が届く使われ方に」となると、企業に投資するという手がありますが、別の1つの形としてNPOバンクが考えられます。

この本は、これから根付くであろう日本のNPOバンクについて書いてあります。他に類がない本で、この手の話に興味がある方へは一読の価値ありではないでしょうか。

近い考えでは、社会的責任投資(SRI)があります。投資信託などで投資できますね。では銀行はどうでしょうか。銀行にも社会的責任に共感し行動しているところがあります。例えばエコ関連企業を応援する銀行です。ただし、そうした企業へ融資するのではなく、預金残高の一部や金利の一部を銀行からNPO団体に寄付するそうです。

NPOバンクと呼ばれるNPO団体は、直接貸出しを行います。NPOバンクといっても、それは1つのNPOではなく、全国にいろいろな理念と名称のNPOバンクがあって、規模も出資総額で1000万円くらいのところから2億円くらいまでいろいろある。貸出し先の事業も、環境だけでなく、福祉や介護から地域活性化までと多岐にわたる。

せっかくの良い仕組みなのに、制度上の問題を抱える。NPOバンクは法令上の銀行ではなく、それゆえ預金者から預金を預かって利子をつけるというビジネスができない。その多くは出資者から無配当・無利子で出資を募るという組合形式を取っている。残念ながら預金保険の対象にはならず、元本の保証はない。融資については、銀行ではない以上、貸金業法によって規制を受ける。

こういう状況ではあるけれど、社会的な金融インフラという意味で、僕はこのNPOバンクの可能性を感じるのです。投資において、株主資本という形をとると、株主の期待と事業主の想いがズレることがあるから、適正だと思われる利益(すなわち配当)と社会的責任のバランスを取るのが容易ではない(しかし不可能ではない)。

これが銀行のような形式だと、一定の利息を返してもらえばよいから、事業主が利益に走り過ぎることは防げるし、株主による配当要求に屈することもあるまい。屈するとはちょっと皮肉な表現だが、少なくともコミュニケーションの行き違いで、配当が少なすぎるという誤解が生じることはあるまい。

参考(ボクのブログ):http://d.hatena.ne.jp/ninja_hattorikun/20100501/1272692116

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 金融ビジネス
感想投稿日 : 2010年6月3日
読了日 : 2010年5月1日
本棚登録日 : 2010年5月1日

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