内容は自衛隊の幕僚長としては当然のことが書かれているが、それにしても著者の書くものに何か大切なものが見当たらない。歴史性と言えばそれまでだが、近代日本の来歴とそれをもたらした日本の質実たる伝統を感じさせる筆ではない。
年間50ラウンドもゴルフをするというから、古の人間の言葉に耳を傾ける余裕などなかったのだろう。その政治的立場と言説に与したとしても、こと、この立場にあった人物であれば、ここは肝心なことだから記しておきたい。これこそが「戦後なるもの」の正体であると。著者はサラリーマン(公務員)であり、軍人ではない。そういう風に「生活」してきたのだろう。それは本著を見れば如実に分かる。おそらく著者は肯んじないに違いないが、それでも国防の任を担う人間がかくも「堕落」していたのかと思い、また、著者の言説が「憂国」として評されることに暗澹たる思いがする。名刺の住所欄に「ヒ・ミ・ツ」と書いている、そのアホ臭いことを嬉々として述べる精神性、それが「戦後」ということだ。
乃木将軍から100年、時代は確かに、くだった。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
政治
- 感想投稿日 : 2012年8月26日
- 読了日 : 2012年8月26日
- 本棚登録日 : 2012年8月26日
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