配色の設計 ―色の知覚と相互作用 Interaction of Color

制作 : 永原康史 
  • ビー・エヌ・エヌ新社 (2016年6月24日発売)
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本棚登録 : 204
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配色についての、実践による体験を重視した教育書です。

別々の色に囲まれることによって、同じ色なのに全然違う色であるように見える錯視があるように、物理的(光学的)な記述に認知的な評価が必ずしも一致しないわけであり(書中ではこれを「事実」と「実際」と表現しています)、なぜそのような乖離が生じるのか、どのような場合にそのような乖離が生じるのかを、カラーペーパーを生徒が実際に組み合わせて認知評価をすることで配色の能力を身につけていくアプローチが取られ、色相/明度/彩度といった色彩学においてはごく基本的な理論は実践の後に語られます。

このような教育アプローチがあらゆる分野において普遍かどうかについては、アートと関連が深い色彩学だからこそ有用なのかもしれません。しかし、それは裏を返せば、世に多い実践に先立って理論を説明する教科書よりもこの本には先見があったと言えます。

カラーペーパーは様々な雑誌をスクラップして用いることが推奨されています。オリジナルが書かれた1963年当時は、明度と彩度が同じで色相のみが異なる2色、ある2色の中間の明度の色を探すことが難しかったようですが、現代ではコンピュータのごく簡単なペイントソフトでも色相/明度/彩度を要素ごとに調整して色を作ることが出来ます。画面のまま用いる場合は投射色と反射色の違いに注意する必要がありますが、より身近に厳密に配色を試すことが出来る環境にあっては、むしろ美術の生徒のみならず一般に遊ぶように配色の実践研究をする機会が開かれたと言って良いでしょう。本書により、独学におけるその手ほどきが得られます。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 専門書(基本的な知識が必要)
感想投稿日 : 2017年5月6日
読了日 : 2017年5月6日
本棚登録日 : 2017年5月6日

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