舞台は19世紀、カスピ海付近の中央アジア草原地域。遊牧を止め街に定住するエイホン家の少年カルルクの元に、アミルという名のお嫁さんが嫁いできます。しかしこの時カルルク12歳、アミル20歳。年齢差、体格差などから、読んでいる方としても「ちょっとこれは無理があるのでは…」と一瞬戸惑う。が、読み始めた所あっという間にその懸念は消え、その世界観に引き込まれてしまいました。
馴染みの無い異文化のお話なのに、読み進めるのが全く苦痛ではないのはその画力と絵の美しさ故でしょうか。民族衣装や絹織物、装飾品の飾り物が細かく、素人目からしてもクラっときてしまうくらい緻密。徹底して書き込まれています。この時代この地域を舞台とした作品は大変珍しいのではないかと思います。マニアックとも言える程にこのシルクロード時代のこと、家族の面々、日々の生活が丁寧に描かれる。
子供ながら聡明で落ち着いたカルルクと純粋で初々しいアミルのやり取りは見ていて微笑ましい。1巻ではまだまだ2人は夫婦というよりもパートナーといった感じだけれど、当事者のカルルクとアミルが決して急がずお互いを尊重し合っている。
アミルは天然でありながら殆どの事をソツなくこなし、弓を使った狩りの腕が一流にも関わらず恥じらいがちな乙女という、不思議な魅力の女性。森先生はアミルに関して「明日死んでも悔いの無いキャラ作り」をしているそうで。エマにも通じる森先生作品独特の、純朴なのに時折ハっとするほど色っぽい女性は何なんでしょうか。
またこの乙嫁語りで「末子相続」という制度を初めて知りました。相続品としての物質的財産が多い、遊牧民社会ならではの制度ですね。
- 感想投稿日 : 2012年9月27日
- 読了日 : 2012年9月26日
- 本棚登録日 : 2012年9月27日
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