清張の兵隊へのとられ方は、大岡昇平のそれとよく似ている。30歳代、妻子持ち。恣意的であることをうかがわせる人選。生きて還ることが期待できず、遺された家族の苦痛や苦労がまじまじと想起される状況。絶望の大きさは計り知れない。
ひとの欲にまみれた描写の多い社会派作品を今に読むとき、清張の軍隊経験やサラリーマン体験がそれら作品のバックグランドにチラ見えする。清張をとりまく世界にとって、個々人において悪意は確かに存在し、世間において陰謀は確かに存在している。
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- 感想投稿日 : 2019年3月1日
- 読了日 : 2019年2月28日
- 本棚登録日 : 2019年2月28日
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