資本主義は私たちをなぜ幸せにしないのか (ちくま新書 1740)

  • 筑摩書房 (2023年8月7日発売)
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・1/3位読んで,読むのをやめた.時間がない人は巻末の解説を読めば十分そう.

大きな学びは以下の通り
・資本主義は経済システムではなく制度化された社会秩序である.資本主義は資本主義の枠の外にあるものを前提とするのにそれらに対して見返りを与えていない.近年の少子化,環境破壊,民主主義の危機といった形でそれが表れている.これは資本主義の持続可能性に大きな疑問を投げかける.このように単なる価値交換の仕組みにとどまらない影響を持つがゆえに資本主義は「制度化された社会秩序」なのである.

・主語が大きいこともあるが腹落ちする論理展開を読み取れない部分が多い.
お気持ちが先行しているのか自分の理解力が欠如しているのかのどちらかだろう.

・資本主義が維持していくには資本主義的でないものを糧とする必要がある.社会的再生産や自然環境,政体.なのに資本主義は非資本主義的なものにタダ乗りをしてて十分な見返りを与えていない.

・この手の本で昔,「東京はダサい町である.人口の再生産ができず郊外から人を仕入れないと維持できないから」という旨の一文を読んだことを思い出したがこれを堅苦しく表現するとこうなるんだろう.巻末の解説の「資本主義は労働力の商品化が要諦であるが,資本主義は労働力自体の生産はできない」という点とも通じる.

・資本主義を絶対悪と見做す前提がそもそも腑に落ちない.
ー構造上「搾取」や「収奪」は起きているが,個々人が,あるいは国家や人類が得られてきた恩恵も多分にあるのでは?
ー少なくとも21世紀の日本では誰もが投資を始めることができるしビジネスを始める(労働力をうるのではなく商品を売る資本家になる)こともできる.マタイ効果による不平等性は否定し得ないがそれでもできることはあるのでは?
ー資本家が「搾取できる」立場にあるとはいえ,その立場に至る上でリスクテイクをしている.このリスクテイクに対する見返りは?このリスクテイクには一切見て見ぬ振りをして,「搾取だ」と糾弾するのと「あいつは賢くもうけてずるい.俺たちにも分前をよこせ」と曰うのと何が違う?

・ましてはその資本主義の代替策が「社会主義」であるという主張はもっと受け入れ難い.


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資本主義は「経済システム」ではなく「制度化された社会秩序」

資本主義を規定する第一の特徴:
生産手段の私的所有

生産手段が手元にない→労働市場へ赴く
第二に特徴:自由労働市場

第三の特徴:自己増殖が目的化

マルクス「資本主義社会では資本そのものが主体,人間は駒に過ぎない」

情動労働
自分の感情をコントロールし,相手に合わせた態度や言葉遣いが求められる労働
肉体労働とも頭脳労働とも違う

共食い資本主義
・資本主義の生産は,資本主義の枠組みには収まらない社会的再生産(子供を産み,育てる.動植物層を維持する等)がなければ維持できない.それらからもらうものはもらうのに返さない.

"マルクスは資本主義を搾取のシステムと捉え直した"、"蓄積の秘密が資本による金労働者の搾取にあることを突き止めた"
→個人的は完全にアグリーではないけど、こういう頭で世界を見ている人は金持ちが悪者に見えて仕方ないんだろうな。

"マルクスの考えでは...労働者に支払われるのは、社会的に必要とされる平均的な再生産費用だけだ"

"マルクスの考えでは、資本主義は単なる経済ではない。階級支配の社会システムであり、その中心を成すのは、商品生産において資本が自由労働を搾取することである。"

搾取: 金で労働力を買う →労働者
収奪: 人間の能力や自然資源を没収し、資本増殖の回路に徴用する 例 奴隷制、先住民、植民地

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感想投稿日 : 2024年1月21日
本棚登録日 : 2024年1月21日

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