誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)

  • 新曜社 (1990年2月1日発売)
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大学の研究室で毎年勉強していた本でした。
当時は対応づけ、アフォーダンスやフィードバックについての印象が強く残っていました。

仕事でWebシステム設計に関わるようになり、今一度読み直そうと手に取りました。
事例紹介は家電や家具などのモノが多いですが、UI設計に当てはめることができる項目がたくさんあり非常によかったです。

以下その項目と、UI設計に絡めた自分の考えです。

・アフォーダンス
ボタンに見えるからクリックする、というのがアフォーダンスだとすると、押せると思ったのに押せない、またその逆というUIもよく見かけるので意識されるべき。

・因果性の心理学
ある行為のすぐ後に起きた事は、その行為よって引き起こされたように見えてしまうということだが、確かに、トラブルが起きた時、全然関係ないことを原因だと思い込み対応しようとして復旧に時間がかかってしまうことがあった。

・操作を間違えてしまって何かエラーが起こっても、ユーザーは、デザインのせいではなく自分を責めてしまう
改善点を挙げてもらう時には、この点に注目しないとデザインの改善はできないということだろう。また、エラーを最小限にするデザインをあらかじめ入れておく。

・初めてなのに苦労なく使えるものは誰かが上手にデザインしている

・物理的、文化的な制約があれば、操作の選択肢が減る。
・頭の中の知識とが外界にある知識は、常にトレードオフの関係。頭の中の知識でできればはやいけど、学習がいる。書いてあれば検索可能だが、美しくない。

・制約とアフォーダンスをデザインに利用すれば、目新しい場面でもユーザーが直ちに適切な行為を行える。
ラジオボタンとチェックボックスもその一つか?

・スイッチが多くなったら、グルーピングをしたり形を変えたりすること。
webの場合はアイコンを用いるとか?

・可視性とフィードバックがないと良いデザインとは言えない。
反応しているわからず何度もクリックしてしまうようなデザインはダメ

・間違いを許さない社会的圧力が強い影響を及ぼす。危険を報告したことが間違いだった時にそれを罰するような社会構造のデザインが問題。
勇気を出して気になることがあるとユーザーに言われたらきちんと調べ、感謝しよう。会社の風土も大事。

・エラーに備えてデザインする
1.原因を理解し、その原因が最も少なくなるようにデザインすること
2.行為は元に戻せるようにすること。戻せないならその操作をやりにくくすること。
3.エラーの発見、訂正をしやすくしておくこと

・強制選択法は、非常時とそうじゃない時のトレードオフを考慮。信頼性も高めないと、機能そのものを外されてしまう。


・デザイナーはユーザーではない。
デザイナーは設計している道具に習熟してしまう。ユーザーは、その道具を使って行う作業に習熟している。これはビジネスツールを作る上では常に肝に銘じておかねばならない。

・デザイナーが、ユーザの立場に立とうとした時にも、頭の中にある知識を活用してしまう。一方、ユーザが初めて使う時やたまにしか使わない時は、ほとんどすべての情報、外界の知識に依存しなくてはならない。

・デザイナーの立場では、ユーザが陥る問題や、思い違い、エラーを予測することができない。

・年齢、ハンディキャップなどを考慮すると誰もが使いやすくなるための簡単な解決策はないが、柔軟性を考えてデザインすることは役に立つ。

・選択的注意(目の前の問題に注意を払って、それ以外を考えに入れないこと)に気をつける。デザインにおいても、1つの要因に注目するあまりに他の要因に目を配り忘れていないか。
Webデザインにおいては、美しさを重んじて使いやすさが損われる、つくりやすさを重んじて、美しさが損われるなど。

・ユーザーの多くはマニュアルを読まない。その傾向を、デザインする人は考慮に入れるべき。

・わざと使いづらくデザインする場合もある。(軍事施設のボタンや、福祉施設のドアなど)
ただし一つの安全を回避して、また別の安全を脅かす可能性があることは忘れてはいけない。(開けづらいドアは非常時には危険)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2024年2月1日
読了日 : 2024年2月1日
本棚登録日 : 2023年3月28日

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