寂れた県の、中核市とはいえ寂れた市の、国道沿いとはいえ田んぼばっかりで、通るのは通り過ぎる車ばかり。
夜が更ければ真っ暗な中を、紳士服フタタと下宿を自転車で数十分かけて往復する生活。
思えば中学も高校も近くにあり、似た生活を送ってきた数十年……深津絵里演じる馬込光代のいわゆる「同じ国道を行き来するだけの人生」(34号線)。これ、わかるわ……。
また、仕事で佐賀市にも唐津市にも福岡県は博多にもよく通っていたので、それぞれの土地の距離感がまざまざと蘇るようにわかった。
しかも原作2007年映画2010年ということなら私は25歳前後。まさに作中、妻夫木聡演じる清水祐一や、満島ひかり演じる石橋佳乃、岡田将生演じる増尾圭吾と、数年くらいの幅の中にいた……映像に一瞬映った佐賀駅南口。
ひょっとしたら私が佐賀駅南のサガシティホテルの暗い照明で陰陰滅滅と「20世紀少年」を読んでいたころかもしれないし、駅北のアパホテルで酔った挙句全裸で部屋を出て我に返ってフロントマンに助けを要請したころかもしれないし、ホテルグランデはがくれや四季彩ホテル千代田館や佐賀大和ICより北の登龍園の窓がない部屋に泊まっていたころかもしれない。
佐賀市から博多に向う峠は数回通ったことがあるし、佐賀大和ICから唐津への道は何度も何度も通った。彼女が通った高校は佐賀北高校か北陵高校か高志館くらいかしらんと目安がつくし、彼が高校に通ったなら唐津青翔だろうなぁ、とも。
翌日追記・「通った小学、中学、高校も職場もすべて国道34号沿いにあった」ということは、致遠館かな……。
と、ついチラシの裏に書いてしまった。
演出は結構ウェットで、控えめに叫んだり、結構泣いたり。
とにかくウェットで過剰な演技を忌避したい私にとっては、ややウェットすぎるかな(ポン・ジュノの作品は血と反吐と口紅と得体のしれない水とであふれているのに、画作りはドライ……そのほうが好ましい)……でもギリギリのところかな……逃避行の果てを描くのに灯台と草原というのはなかなか悪くない(がトラン・アン・ユン「ノルウェイの森」のほうが数段上だ)、と、及第点なのに上に突き抜ける要素がない……惜しい。
君に会うまで殺人を何とも思っていなかった、とはっきりと「罪と罰」のソーニャに対するラスコーリニコフの心情を語り始めるが、やや唐突。あるいははじめっからソーニャのことを考えながら本作を見たり原作を時間をかけて読んだりすれば、違うのかもしれないが。
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- 感想投稿日 : 2021年1月26日
- 読了日 : 2021年1月26日
- 本棚登録日 : 2021年1月26日
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