死者の書と言うと大層なものに感じるが、実際には死と生の間である中有の際に迷う死者を導くためのお経である。ただひと味ちがうのは、何が見え、それが何であるかを説明し、そしてどうすればいいのかというアドバイスをひたすら繰り返すという独特の形態をとっていることである。
読んでいて奇妙に思えたのは仏教とヒンドゥー教の合いの子にチベット的な要素が加わったようなもので、チベット独自のものとは言いがたいにも関わらずチベット仏教の経典のように扱われているという点である。もちろんチベット仏教も仏教の一つの形態であると同時に、仏教がヒンドゥー教の影響を受けているため似ていたり同じ要素が含まれているのは当然であるが、チベット密教の経典の一つとして見るとあまりにもチベット的と感じる要素が少ないのである。もしかすると本当の死者の書があるかもしれない――そう思わせるのも魅力の一つかもしれない。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
思考・思索・哲学
- 感想投稿日 : 2014年1月27日
- 読了日 : 2014年1月27日
- 本棚登録日 : 2014年1月27日
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