天皇の歴史6 江戸時代の天皇 (講談社学術文庫)

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  • 講談社 (2018年5月10日発売)
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260年という長い江戸時代、歴史の裏舞台とされた天皇と朝廷にもいろいろな動きがあったのだ。後陽成、後水尾は徳川家康・秀忠・家光との権力闘争を繰り広げた。禁中並公家諸法度による幕府の統制により、天皇、そして134家の堂上家(公家)は学問、管弦、その他雑芸、詩、能書に励むことを義務付けられた。その中での天皇はそれらの公家への統制を行う闘い。江戸中期は中御門、桜町、桃園、後桃園と続く天皇夭折により、皇統断絶の危機があり、閑院宮からの光格天皇の即位(1779年)があったことは今の危機を思い起こさせる。江戸時代を通じて天皇の権威が高まっていくその動きが良く分かった。寛政期の老中・松平定信が天皇は神国の主であり、幕臣も天皇の配下である将、軍は天皇から政務を委任されていると認識していたことは興味深いところである。江戸時代に徐々に天皇の権威が高まっていた証左だと感じた。新居白石、荻生徂徠が官位制度が天皇との君臣関係を大名に想起させるので危険だと警告していたということも面白い。光格から現在に至る天皇家の伝統が出来上がったことを感じた。明正、後桜町の2人の女性天皇については肖像画がないことに象徴されるようにその特殊性、天皇としての神事・儀礼を務める上での限界があったことも、今後の女性天皇を考える上で、古代の女帝以上に参考になると思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本史
感想投稿日 : 2022年10月11日
読了日 : 2022年10月11日
本棚登録日 : 2022年8月18日

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