須賀敦子の方へ

著者 :
  • 新潮社 (2014年8月29日発売)
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本棚登録 : 84
感想 : 7
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須賀(ガスちゃん)の幼少期からの人生、お人柄がクリアに浮かび上がる。日英仏そして伊と4か国語を自由に使いこなした文章家の魅力的な人生だ。幼少期に夙川に住み、小林聖心小学1年の時の「そーでアール」という授業中の返事!とてもやんちゃで元気な少女。それにしてもいつも笑顔で誰とでも親しくなり、かつ厳しさを備えていた魅力的な人間像。父の影響で須賀は森鷗外の「渋江注斎」の五百という女性に魅かれていた。16歳の頃は近くの夙川カトリック教会の地下室(海軍の医薬品備蓄倉庫)で働くが、ここも空襲に遭ったさなかのこと!しかし須賀の著書には生々しい戦争記憶の記述は全くないそうだ。印象に残る文に出会った。「読書はほんと対話するだけではない。本を読んでいたときに起きた感情、友人との会話、その時代、暮らし、じつに様々な瑣末なことまでも一冊の本は記憶を蘇らせる。一冊の本は読書をしたときの日記であり、過去からの手紙でもある。それだけに須賀は乱読した本よりも、あの時代に熟読した本を選んで、「遠い朝の本たち」とした。」著者は建築家・作家として須賀に親しく接した。「雰囲気がある人だった」というのは、須賀の文章の香りからも感じられるとおりだと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 自伝・伝記
感想投稿日 : 2014年11月7日
読了日 : 2014年11月6日
本棚登録日 : 2014年11月5日

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