小町はどんな女(ひと) 『小説 小野小町 百夜』の世界

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  • 日経BP 日本経済新聞出版 (2023年7月20日発売)
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 著者の小説「百夜」を著すに至った背景を興味深く読んだ。小野小町は古今集に18首、後撰集に4首の歌があるだけで、この他には一切記録がない!という。古今集などには文章もほとんどない!そして後世に観阿弥・世阿弥の能楽の主人公として零落した晩年が描かれているが、その真偽は全く不明。著者は小町に自らを投影して、小町を救済したい思いで書いたとのこと。僧正遍昭(俗名・良岑宗貞)との恋、在原業平との男女関係には及ばなかった接点、仁明天皇、遍昭の子・素性法師、小野篁・小野良実などとの関係を全て創作で作ったその考え方などが詳細に語られ、それを歌人の小島ゆかりと語る対話も、全てが実に興味深かった。小町が男性よりもむしろ女性に共感性を感じさせる人気がある理由の説明に説得力があり、気がつかなかったが成程と思った次第。それは彼女の歌に理由があるのだ。
「花の色は移りにけりないたづらに 我が身世にふるながめせしまに」
「色みえでうつろふものは世の中の 人の心の花にぞありける」
「思いつつ寝ればや人の見えつらむ 夢と知りせば覚めざらましを」
「うたたねに恋しき人を見てしより 夢てふものはたのみそめてき」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本文学
感想投稿日 : 2024年4月16日
読了日 : 2024年4月15日
本棚登録日 : 2024年3月17日

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