スペインそしてポルトガルのユダヤ人からの改宗者マラーノが辿った苦難の歴史。キリスト教を信じているとはいえ、ユダヤ人であるがゆえに、ユダヤ・キリスト教いずれからも受け入れられない悲劇の人たち。マラーノは「豚」という意味だそうです。1500年前後の両国のユダヤ人から始まり、イギリス、イタリアへの避難など。ポルトガル国王の候補者の一人ドン・アントニオは王の後継者でありながら、ユダヤ女性の子供であったためにスペイン・アルパ公爵軍の介入を招いた、そしてイギリス亡命とエリザベス女王の保護。ユダヤ好きとして警戒されたエリザベス治世で起こったマラーノ迫害。それにより命を落とした女王の医師ロドリゴ・ロペス。キリスト教に改宗した人たちも、その血のゆえに殺されていく。本当に恐ろしい歴史です。スピノザ、カフカ、ハイネに至るまでの系譜の中に彼らの精神構造の奥深く潜む苦しみを描いた秀作です。シェークスピアの「ベニスの商人」は反ユダヤとして有名ですが、シェークスピアが実はこの作品の中にユダヤ弁明の発言を隠しているという説明は意外ながら、なるほどと言うようにも思います。シャイロックのこだわりはキリスト教に対するアンチテーゼとして描かれている・・・・。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
世界史(西洋中心)
- 感想投稿日 : 2013年8月24日
- 読了日 : 2003年6月9日
- 本棚登録日 : 2013年8月24日
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