ポプラ社の江戸川乱歩シリーズの中で、とりわけ思い出される一冊です。
とてもロマンティックなイメージ✧
からくり時計塔、という、まだ中身を知らない段階でも聞くだけで空想をかきたてる舞台。そこに登場するのは謎めいた美女。時計塔を背景に白いドレス姿で駆ける(ややシンデレラとかぶっている……)ヒロインを描いた、岩井泰三氏による表紙イラストは効果絶大で、幼心にもときめいたものでした☆
黒岩涙香の『幽霊塔』に心底惚れこんだ乱歩は、過去にその翻案小説を書いたのでしたが、まだ興奮冷めやらず、年少の読者も親しめるようにとリライトしたのが『時計塔の秘密』でした……とされていたのですが、弟子筋のリライト説が有力と分かってびっくり!
のちに乱歩の大人版『幽霊塔』も読んだけれども、あらすじはほぼそのままでも、あの胸の高鳴りだけは味わえませんでした……。少女の頃に知ったポプラ社版への想いは格別です★
『時計塔の秘密』というタイトルからして好み。舞台となった古びた時計屋敷の呼び名「幽霊塔」が、もとの作品名にもとられていたのだけど、それではおどろおどろしすぎて、ときめかないのです……。
改題大成功☆ このセンスの良い改題も、ゴーストライター氷川瓏の案だったのでしょうか?
大人になってから読んでも、野末秋子の変幻自在さには驚きます。突然現れたのに時計塔の構造に精通していて、ある時は作家、またある時はピアノの名手、しかも何か暗い過去を背負っているらしい。美貌の秋子は、またたく間に周りの人間を虜に。
主人公の少年だけならともかく、名探偵・明智小五郎さえ「こんなに美しい人に殺人なんてできるとは思えない」と、とんでもない動機で彼女の無実を立証しようとするのでした★
怪しい行動をとっても、若く美しいというだけで破格の扱い。
……憧れって大事です。本当にキレイなひとは心もキレイだといいね。
- 感想投稿日 : 2016年2月24日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2005年7月18日
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