19世紀末、パリ。権威と保守に満ちた画壇会に一石を投じる天才画商がいた──その名はテオドルス・ファン・ゴッホ。後の天才画家、フィンセント・ファン・ゴッホの弟だった。兄弟の絆と宿命を描く伝記ロマン!
権威、品格、階級で縛られた美術の世界。それを窮屈だと切り捨てるテオは、本物の夜明けを見せると言い放つ。その表情、仕草、言葉──何をとっても色気が漂う。決め台詞のシーンは男からでも見惚れてしまうカッコよさ。品格ある題材に限らず、素晴らしいものをあるがまま描くことの魅力が伝わってくる。
「生きて生きて 精一杯生き抜いて死んでいく人を僕は惨めだとは思わない…立派な人生だ 僕はそういうものを描きたいんだ」
フィンセントの絵は生活の中にある美を鮮やかに思い出させてくれる。絵だから描ける人の美しさがある。実際に作品を見てみたくなったなあ。
「体制は内側から壊すほうが面白い」
テオがロートレックへかけた言葉と横顔に痺れるね。権威の真っただ中にいるジェロームと相まみえても、その野心は止まらない。芸術もその伝え方も型に縛られないところがいいよね。そんなテオがフィンセントのあの絵にだけは縛られ続けているというのが切ない。一生分の希望と絶望をその瞬間に受けてしまったような、そんなワンシーンだった。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
漫画
- 感想投稿日 : 2023年2月14日
- 読了日 : 2023年2月14日
- 本棚登録日 : 2023年2月14日
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