吸血鬼の原罪 天久鷹央の事件カルテ (実業之日本社文庫)

著者 :
  • 実業之日本社 (2023年10月6日発売)
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感想 : 74
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相次いで見つかった三つの遺体には、いずれも首筋に二つの傷跡があり、ほぼすべての血液が抜き取られていた?!まるで吸血鬼が起こした連続殺人の謎を解くべく、天才医師・天久鷹央は動き出す!

レーベルを移して初の天久鷹央シリーズ新作長編。今回は捜査一課の桜井たちから内々に事件の相談を受けて物語が始まる。吸血鬼の仕業かと思われる事件なんて、鷹央の大好物すぎるでしょ!小鳥遊や舞とのかけ合いも安定の面白さでサクサク読める。そんな中にも、鷹央の成長が感じられる場面も多くてよかった。

抜群の頭脳を持ち、謎を解き明かす鷹央。その才を活かせば、名探偵として振る舞うこともできる。しかし、あくまで医師としての最善を追求するところがカッコいい。犯人との決着と後日談は、タンニンの深い渋みと軽やかな酸味のハーモニーを感じるワインのような味わい。これだけシリーズを続けて、この濃厚さとエンタメ感が失速しないのがすごい。いつものやり過ぎ潜入ミッションなどはご愛敬(笑)

統括診断部ならではの広い知識が要求される診断。マニアックな病かと思われたものが、意外と身近なものへと繋がっていくのも現実感があっていい。ここでそれか!みたいな場面にワクワクさせられた。犯人と真相を追い、病を診断するだけではなく、いろいろな謎解きが続くのも飽きさせないポイント。さらに社会問題にも切り込んできてボリューム満載。吸血鬼とは誰のことなのか。この社会制度もまた“吸血鬼”ではないだろうか。

レーベルお引越しでシリーズ完全版刊行。さらに年明けには新作短編集に長編も待ち構えていて楽しみは尽きない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2023年10月18日
読了日 : 2023年10月18日
本棚登録日 : 2023年10月18日

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