再起動 リブート―――波瀾万丈のベンチャー経営を描き尽くした真実の物語

著者 :
  • ダイヤモンド社 (2016年12月16日発売)
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感想 : 18

07.3.31 ビジネスブックマラソン
ここ数日、一気に読むのがもったいなくて、ちびちび読んでいた本
があります。

オフィスで読んでいたところ、たまたまセミナーのお手伝いで来社
したインターンの天羽ちゃんに、声を掛けられました。

<土井さん、それ斉藤さんが書いた『再起動(リブート)』ですよ
ね。その本に、私の父が出ているんです!>

そう、土井が読んでいたのは、ダイヤルQ2ブーム時代にフレック
スファームを創業し、2005年にはSNSブームの先駆けとなった
ループス・コミュニケーションズを創業、いずれの事業でも資金繰
りや裏切りの地獄を見て、4度の危機から這い上がった起業家、斉
藤徹さんによるリアル起業ストーリー。

インターン天羽ちゃんのお父さんは、この著者であり起業家、斉藤
さんの「悪友六人組」の一人。当時読売広告社にいて、著者の広告
参謀となった人物なのです。

「ちびちび読んだ」ことからもわかるように、本書の面白さは半端
ではありません。

というか、同じ起業家として、どうやったらこんなにトラブルが起
きて地獄を見て、そこから這い上がれるんだろう、と疑問に思うほ
どの大波乱劇なのです。

ノンフィクションとして読んでも面白いですし、起業家にとっては
転ばぬ先の杖となる一冊でもあります。

順調に経営していたら絶対に知り得ない、資金繰りのための方策や
会社救済のための奥の手などが書かれており、じつに良い勉強にな
りました。

「ファクタリングってこういう時に使うんだ」「こんなところにリ
スクが潜んでいるんだ」と、内容がいちいち新鮮でした。

起業家にとって、こんなに美味しいごちそうもありません。

さっそく、ポイントをチェックしてみましょう。

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プロレス道場の情報量は一二秒一〇円で、同時に一二人が利用でき
る。サーバー稼働率が五〇%でも、一日あたりの売上は四〇万円を
超える計算だ。僕たちが会社で仕事をしているあいだにも、いや、
酒を飲んだり旅行に行ったりしている時でさえ、サーバーは黙々と
仕事をこなし、みんなの給与をはるかに超えた金額を稼ぎ出してく
れる。僕たちは打ち出の小槌を手に入れたのだ

リスク管理に長けた経営者であれば、市場縮小の兆候を敏感に察知
し、すぐに身の丈に合ったサイズまで事業の縮小を断行したはずだ。
しかし、僕はリストラに踏み切れなかった。なんとかして事業を維
持したい。社員の悲しむ顔を見たくない。そのため、僕の打ち手は
ことごとく後手に回った

タケからの情報をもとに福田が調査すると、さまざまな事実が発覚
した。一五名ほどいた技術系社員のうち、四名がオウム真理教の熱
心な信者だったのだ。彼らは社員紹介ということで次々と入社し、
中核的な立場でシステム開発をこなす傍ら、社内で布教を進めていた

岩郷氏は神様が僕たちのもとに使わした救世主だったのだろうか。
いや、内実はそう単純な話ではなかった。「大飯食うヤツは大糞を
垂れる」も彼の口癖だったが、彼はまさにそれを地で行く人物だっ
たのだ

目の前にある現実は限りなく厳しい。あたかも何重にも固く絡まっ
た糸の玉のようだ。だが、それらは僕自身が編んでいった糸なのだ。
どれだけ絡まった糸の玉でも、一本一本、丹念に選り分けていけば、
必ず解きほぐすことができるはずだ

危機のまっただ中で、唯一積極的に融資拡大に応じてくれた金融機
関があった。日本長期信用銀行傘下のノンバンク、日本リースだ。
彼らはファクタリングという手法で僕たちの資金需要に応えてくれ
た。ファクタリングとは企業が持つ売上債権を買い取り、支払いサ
イトの期日前に入金する仕組みだ(中略)これを機に、フレックス
ファームの借り入れ先は銀行から日本リースに一気に移ってゆく。
捨てる神あれば拾う神あり。これでなんとか目先の資金は持ちそう
だ。そう思った矢先に、その事件は起きた

急拡大した組織には落とし穴があった。ハイレベルな人材を集める
ことに集中しすぎて、幹部社員間の信頼関係の構築を怠っていたのだ

守銭奴だと蔑まれてもいい。人の評価を気にするのもやめよう。明
日を気に病むのもやめよう。大切なものを守るためにすべてを捨て
よう。そんな断固たる決意のもとに、僕は三本の矢を実行に移した

起業家の存在意義は、やみくもに会社を大きくすることではない。
自分たちが生み出すプロダクトやサービスを通じて、人々の幸せの
循環を生み出し、よりよい世の中を創ってゆくことだ

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プロローグに、著者が学習院大学の「起業論」で学生に問いかけた
質問がありました。

「起業で一番大切なものって、なんだと思う?」(中略)
「鈍感なことだよ」

著者は、続けてこう言います。

「僕には四度、死ぬチャンスがあったんだ」

起業や人生で困難に見舞われた時、どう考え、どう乗り越えればい
いのか、強力なヒントと励ましをもらえる内容です。

最終的に人はどう生きるべきなのか、何が事業の目的なのか、大い
に考えさせられました。

これはぜひ、ドラマ化していただきたい一冊です。
もちろん、必読です。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: ビジネス・経済
感想投稿日 : 2019年5月31日
本棚登録日 : 2019年5月31日

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