虐げられた庶民が知恵と勇気で殿様をギャフンと言わせる痛快時代劇かと思ったけどそうではないんです。
庶民からも利息を催促されちゃう、ゆるい殿様が実は愛される君主、みたいな話かとも思ったけど、そうでもなかったんです。
もちろん、阿部サダヲやきたろう、西村雅彦らが出ていますので、どこか とぼけた感じのユーモラスな映画には違いありません。
この作品の中村義洋監督は、ほかに「フィッシュストーリー」「白ゆき姫殺人事件」といった作品を監督しています。
普通の人たちがちょっとの勇気で一歩前へ進んで、もみくちゃにされながら、意外な人物に助けられたりもして、最後は大団円を迎える。
という話の描き方がとても上手な監督さんです。役者のキャスティングも上手です。
金も地位も権力もない、友達に凄い奴がいるわけでもない。ましてや隠れた能力なんかもない。
普通の人が悪戦苦闘していいとこまでいくんだけど、やっぱりあきらめたところから、もうひと踏ん張りして、
大団円を迎える、この作品もそんな映画でした。
ふざけたタイトルの割りに感動を味わえる映画です。
舞台となる吉岡宿の人たちは町をよくしたいけど手詰まりでどうしようもないと皆諦めています。
映画のテーマは初めに十三郎から助力を求められた菅原屋が苦し紛れに言ったアドバイスにあります。
「一人ひとりが一生懸命やるしかないんじゃないですか?」
業突張りの金貸しも、冷徹非常の役人も、人には見せないところで実はいい奴だったという心意気に感動を覚えます。
金貸しの浅野屋は激しい取立てで有名だったけど、実は貧乏人からは取立てないばかりか、夜逃げせざる得ない人には餞別を渡していたり、
町をよくするための資金を貯めるために40年間質素倹約に努め、それでも足りない分を子々孫々まで貯めさせていました。
冷徹非常な役人 萱場は吉岡宿の嘆願申し出を足蹴にしたり、金額を巧妙に釣り上げたりしたけど、
全ては藩の財政を一身に背負わされていた故の行動でした。
浅野屋はじめ吉岡宿の連中の行いが、街のため、ひいては藩のためと理解してからは、態度を一変し、殿様にまで行動を改めさせました。
これは実話ということです。ラストシーンで現在の吉岡町と住まう人々の映像が入り、心意気が成就したことが判ります。
熱い湯船に浸かった風呂上りに、心地よい風を受けたかのような、鑑賞して心地よい映画でした。
- 感想投稿日 : 2017年6月1日
- 読了日 : 2017年5月31日
- 本棚登録日 : 2017年5月31日
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