進撃の巨人(17) (講談社コミックス)

著者 :
  • 講談社 (2015年8月7日発売)
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(ネタバレ注意)
ものすごく「巨大な壁」ではある。その中に数十万人が住めるほどの壁ではあるが。しかし、実はその中に約100年前に自ら入り込み、過去の多くの科学的な知識を強制的に忘れ去り、自由をなくし、封建社会の元に厳しい生活を強いられて、ただ巨人の影に怯えてきた人々は、自分たちのことを「世界に最後に残った人類」であると呼んでいた。

ある日、壁は壊され、伝説の巨人たちがやってきて、最後の人類たちを食い始める。巨人の目的は食糧ではない。そもそも巨人はなぜか不死である。それに対して、人類たちは自らの種を守るために、知恵と力の全てを使って、対抗する。それが、まるで人類としての務めであるかのように。

壁の中の世界が全てだ。自称人類たちはそう思っていたに違いない。しかし、17巻をかけて、壁の中の世界は「人為的に作られたもの」であることが次第にわかってきた。

何の目的で。
どのようにして。
誰が。
どの時代の人類が。

まだ何もわからない。
起動装置で、巨人を倒していたのが冒頭部(起)だとしたら、アレンという「巨人に変身出来る人類」が登場したのが、その次(承)だろう。そして、17巻辺りで(転)が終わろうとしている。

人は知らず、私には直ぐに了解出来たのだが、この世界は生まれた時から「就職超氷河時代」の現在社会の若者の「心像風景」そのものだ。そういう視点が持てるのも、私がそのバブル崩壊から20年ほど離れた時間軸にいるからかもしれない。

生まれた時から、「世界は残酷」。世界はゲーム。実力と運で生き残るしかない。大きな災厄は、いつも地震や原発事故のように突然やって来るだろう。チームは大切。愛もあるし、友情もあるだろう。けれども、仲間はホントの仲間とは限らない。そもそも、世界とは何なのか。何重にも張り巡らされた、大きな「黒幕」がそれを見えなくさせている。

壁とは、ホントにあったのだろうか。そもそも壁とは何なのか。巨人とは何なのか。

漫画はおそらくこれから一つの答えを導き出すだろう。しかし、おそらくその直後に、大きな新たな壁が読者の目の前に立ちはだかるに違いない。しかし、絶望する必要はない。人間に目に見えるモノは、全て越えることの出来る壁である。
2015年11月1日読了

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: さ行 フィクション
感想投稿日 : 2015年11月13日
読了日 : 2015年11月13日
本棚登録日 : 2015年11月13日

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