すわ!高野文子の新作が出ていた(2022年9月発行)!私としたことが!
取り寄せて紐解いてみると、高野文子の絵はほとんどないのであった。でも、これは高野文子が「昭和のくらし博物館」学芸員となって、一つの展示会の準備をした、その全貌なのである。紛うことなき高野文子著作と言っていい。
昭和のくらし博物館、紛うことなき「マニアック博物館」である。外観はまるきり昭和の二階建て木造住宅。その2階で2017年「山口さんちの子ども部屋」という展示会があった。1961年、9才のいずみさん、7才のわかばさん姉妹の持ち物・人形や玩具、日記などさまざまな「暮らしのかたち」が再現された。実にタイムカプセルのような、お母さん静子さんがとっておいた箱が博物館に寄贈されたのだ。
高野文子の絵はほとんどないけど、構成は普通の図録では見たことないほど微に入り細に入り表現されて、後半は山口姉妹のインタビューも入って、とっても楽しい。
私の家には姉妹はいなかったので、あんまり暮らしは被らないけど、それでも60年代豊島区千早町の子供の世界は想像できた。おはじきや、手作りの着せ替え紙人形、絵日記、国語ノート、お人形ごっこの豊富な衣装、小道具、紙着せ替えの歴史、果ては身寄りのない少女を家に住まわせていたこと(子どものお世話係)、都会の家の独特な間取り等々、60年代の暮らしを覚えている女性にとっては、いろんな発見がある本だと思う。
題名の由来。写生画の裏面にお母さんの筆跡で「この絵はよくかけてあるので、とっておいてはどうですか」というメモがあったという。それを高野文子が筆跡を真似て題名にした。
私はあんまりモノを使っての遊びはしなかったから、残るものは少ないけど、私のたくさん描いた図画、仏壇にしまっておいたはずの創作ノート、夏休みの日記、抱っこ人形‥‥あれらはいったい何処へ行ったのだろう。
博物館住所 東京都大田区南久が原2-26-19
開館 金・土・日・祝 10時〜17時
機会があれば行ってみたい。
- 感想投稿日 : 2023年7月25日
- 読了日 : 2023年7月25日
- 本棚登録日 : 2023年7月25日
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