稲と日本人 (福音館の科学シリーズ)

著者 :
  • 福音館書店 (2015年9月5日発売)
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感想 : 14
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ふと図書館の展示コーナーが目につきました。監修・佐藤洋一郎とある。いっとき縄文・弥生時代のコメのDNA鑑定でよく登場していたので、この絵本は「弥生時代の絵本だ!」と思って借り受けたわけです。そしたら、佐藤さんの専門は農学者ということで、この2千数百年間の稲作の歴史をビジュアル豊かにまとめた本でした。話の8割は古代以降でした、けど、とっても興味深かったです。

博物館にある、時代を説明するための「図」ではなく、甲斐信枝さんの感性で描かれた古代焼畑農業の図や、日本最古の田んぼ・菜畑遺跡の田植え風景は、パステル画の曖昧な部分もあるものの、とっても想像を刺激するものでした。特に佐藤洋一郎さんがどうしても描いてほしいとリクエストした、日本には存在しないが未だ現存している「野生稲」の堂々とした姿は、感慨深いものがありました。1〜3億年前から生き抜いたあとに、一万年前、中国長江辺りで食べられ始め、改良を重ねて日本にやってきた、その始まりの稲なんです。

稲は日本にやってきても、自然との戦いの中で改良は続きます。また、1300年前に作られた香川県満濃池を弘法大師が大改修し、更に打ち壊されたり改修を重ねたあとの、壮大な現在の池の姿が目の前にあります。100年前の阿部亀治さんの寒さに強い稲「亀ノ尾」の話もあります。現在の品種は、いろんな名もなき人々の闘いの結晶なんだということがよくわかりました。

フィリピンに国際稲研究所があり、やがて世界か食料飢饉に襲われた時、「不味いけれども、たくさん収穫できるお米の種子」が眠っているそう。

甲斐さんの10年の取材をもとに作られた絵本でした。小学高学年から読めるけど、ご飯を食べるたくさんの大人にも読んでほしい絵本でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: あ行 ノンフィクション
感想投稿日 : 2023年9月11日
読了日 : 2023年9月11日
本棚登録日 : 2023年9月11日

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