高村透「逃げろ。」を読了。今月27冊目。
結論からいうとすごく気に入った。400ページ弱を一気に読み切る事は滅多に無いのだけれども、中断する事無く読み切ってしまった。ただ他の人のレビューを見ると好評なのを探す方が難しい。確かにこの本を好きっていう感覚はちょっとクソッタレなんだと思う。
さて、あらすじは「地球に巨大隕石が落ちてきます」という週末の予定が終末でした・・・そんなお話。しかしこれ、終末パニックものかと思いきやキャラ小説なんだよね。どう考えてみてもキャラ小説。萌えは全くないけどキャラ小説。クソッタレな世界にクソッタレな人たちばかり出てくる。そんなクソッタレな小説ですが僕は大好きです。
著者の方は劇団やっていたらしくて、なるほど独特の空気感は舞台っぽさかと納得。大ピンチな状況で繰り広げられるシュールでコミカルな会話など舞台そのものじゃないか(見た事ないけどイメージで)。
終盤の展開が少しばかり惜しい気がするけども、それは文学的観点から見ればであって、舞台脚本なら見栄えはする展開っぽいから、まぁ良いかなと。あと主人公、音楽好き設定で、やたらと音楽を語るんですけど、邦楽バンドでは「ねごと」をプッシュしてたので、それもポイント高いですね、はい。
さて、以下は一番気に入ったシーンから引用です。
”それは彼が初めて加奈とそういった行為に及んだときのことだ。あまり経験のない彼にはうまくリードができずぎこちないものであったが、彼は加奈の美しさを褒め、彼女に無理をさせまいと頑張った。彼のそれはスマートではなかったかもしれない。けれどムードのあるものだった。そういう行為のときにもっとも大切なものを彼は知らず知らずのうちに押さえていたのだ。誠実な男にしかできないことだ。しかし彼は何を思ったのか射精をする際に「ロマンス!」と叫んで射精をしたそうだ。ああでも、ううでも、おおでもなくロマンスだ。ロマンスなのだ。”
「ロマンス!」って。最高じゃないですか。この後、加奈ちゃんは兄に、男の人はこういうものなのか詰問するのです。ページをめくる手が止まらなくなりました。ちなみにここまで書いて読み返してみて、随分とコミカルな印象を与えるなぁと我ながら思ってしまいましたが勘違いです。ダークでブラックです、この話は。
- 感想投稿日 : 2012年5月26日
- 読了日 : 2012年5月26日
- 本棚登録日 : 2012年5月19日
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