贄姫と獣の王 11 (花とゆめCOMICS)

著者 :
  • 白泉社 (2019年8月20日発売)
3.90
  • (6)
  • (16)
  • (5)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 210
感想 : 6
5

先にぶっちゃけると、私はまだ、(12)を読んでいない
本当に面白い、と感じさせてくれる漫画は、感想を書くまで、新刊を読まない、と自分ルールを設けているからである
漫画読みなので、新刊は出たらすぐに読みたい、その気持ちは、私にも他の漫画読みの方と同じく、ある。けれど、前の巻が、冗談抜きでイイものだと、そう、すぐには、自分が納得できる感想が書けないのも事実
これは、単に、私の感想を書く能力が、他の方より劣っているだけだが、一度、決めたルールは、そう簡単に撤廃できないのは事実
実際、早く読みたい、って焦りの気持ちが、却って、頭を冷静にさせ、心の熱を高めてくれる事もある
初っ端から、自分語りをかましてしまったが、本題に入ろう

最初に書いた通り、私は、まだ、(12)を読んでいない
しかし、よっぽどの衝撃的な展開がなけりゃ、この(11)を乗り越える事が、友藤先生は出来ないんじゃ、と心配になるほど、この巻は激烈な内容だった
系統的に言えば、間違いなく、この『贄姫と獣の王』は、ゴリゴリの少女漫画となる訳だが、この(11)で展開されたタイマンは、むしろ、男の漫画読みの方が胸を打たれそうだ
立場や思考を考えても、フェンリルは悪ではない
善ではないにしろ、レオンハートとは、通すべき信念、抱く野望、見ている未来が違うだけで、フェンリルもまた、強き王の器だ
ゆえに、レオンハートとフェンリルは衝突するしかない
フェンリルが、サリフィを危険に晒したのであれば、尚更だ
国を守るべき王としてだけでなく、一人の雄として、愛すべき女の為に戦えるのが、レオンハートだ
例え、他の奴が負けを認めるしかない状況でも、他の奴なら死んでいてもおかしくない傷を負ってしまっても、レオンハートは、サリフィの前で負けてはいけないし、死んでもならない
愛すべき女性に、男が捧げられるのは、勝利だけなのだから
二匹の獣が、野生を剥き出しにし、その牙と爪だけで、相手の命を奪おうとする姿勢は、ほんと、ファンタジー系とは言え、少女漫画として、ギリギリ
けど、この描き方でしか、友藤先生は、自分の想いを、私たち読み手に伝えられなかったんだろうか
なら、私は、友藤先生の猛攻を、この体で真っ向から受けきりたい
サリフィの声で、一度は諦めかけたレオンハートが立ち上がり、勝利への執念を剥き出しにして、フェンリルの圧を上回り、勝利をその牙で噛み取った決着に、グッと来ない男はいないだろうよ
しかも、その後の展開が、これまた、良い意味で少女漫画的じゃなくて、私としては、ますます、友藤先生への好感度が爆上がり必至
勝者がすべき義務があるように、敗者には敗者の、譲れない矜持と渡せない「何か」がある
それを貫き通したフェンリルとニル、彼らの王、右腕としての姿勢には、目頭が熱くなった
言うまでもない事だが、決して、ニルの忠義が、サリフィの純愛より劣っていた訳じゃない
何が勝敗を分けたのか、ハッキリ言って、それは誰にも判らない
ただ、あえて、強引に、レオの勝因を挙げるのであれば、彼が天に選ばれた、そういう事じゃないだろか

この戦いで、サリフィやレオンハートは多くの大切な事に気付き、距離を大きく縮め、より深い愛で結ばれるようになった
一方で、ラントベルトは、大人らの強さを間近で見て、己の体で受け、心に響かされた事は、戦士として良い成長の糧になった様子
彼は、まだまだ、強くなれそう。これからが楽しみ
しかし、二人の王の衝突、これは、何者かの計略であった可能性も出てきた
できりゃ、レオンとサリフィには、しばらく、イチャついてほしいが、新たな敵の影がチラつくとなると、難しいか?

この台詞を引用に選んだのは、シンプルに重く、鋭く、威力があったので
私個人の勝手な受け取り方ではあるが、この言葉こそが、友藤先生が、この『贄姫と獣の王』を愛読するファンへ、最も強く言いたいメッセージだったんじゃないだろうか
大袈裟でも何でもなく、友藤先生が、迷いながらも、自分で選び続け、ここまで来てくれた事には、心からの感謝しかない
けど、先生なら、まだ先に進める、とも信じてる
「・・・私も、この頃、考えることがある。生きる、ということは、選び続けるということだ。何を成すも、成さぬも、どこへ行くも、行かぬも、その選択を他者に委ねることさえ、結局は、その道を自分で選んだことになる。たとえ、それで、望まぬ結果になろうとも、それを間違いだった、と誰が決められる?答えは、出るまで誰にも分からない。選んだ先に、答えがある。そこには、きっと、正しいも間違いもない。ただ、結果があるだけ。そして、また、次に行く道を選択する。生きる限り、選び続け・・・そして、どんな結果に到ろうとも、そこから、目を逸らさず、向き合わねば、前へ進むことはできないのだ、と・・・」(byレオンハート)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: コミック(白泉社)
感想投稿日 : 2020年2月2日
読了日 : 2019年9月9日
本棚登録日 : 2019年8月20日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする