飛ぶための百歩

  • 岩崎書店 (2019年8月13日発売)
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本棚登録 : 311
感想 : 44
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目が見えなくなることは、私にとって、すごく辛いイメージがあり、実際にちょっと目を瞑るだけでも、ものすごい不安を覚える。

でも、それって、本当に見えないわけではないから、真意を理解することにはならないのですが、目の見えない人全てが、辛い気持ちで生きているわけではないことは、この物語が教えてくれました。
悲観的になるよりも、それに合わせた生き方を考えることの大切さを。

この物語の主人公「ルーチョ」も、視覚以外の感覚が研ぎ澄まされることで、自然や動物を愛し、山登りを楽しんでいます。

しかし、彼はそれ以外の世界が、あくまで目の見える人の為に作られた世界であることを痛感し、彼の中でも他人に迷惑をかけたくない気持ちが強くなることで、人に助けを求めず、意地を張る姿が目立つようになりました。

所詮、目の見える人たちに、自分の辛さなんて分かるわけがないと思い込んでいたルーチョですが、そんな彼の考え方を見直すきっかけとなる、ある出来事が起こります。

それは目の見える人の言葉ですが、それでもルーチョは他の人のそれとは違う、共感に近い感覚を覚えます。

なぜか?

私の中の固定観念も、度々見直さなければいけないと思ったのですが、「目の見えないこと」が最も辛いこととは限らず、人の数だけ、その人自身にしか分からない辛さがあるということだと、私は思いました。

誰にも言えなかった、辛い思い。
でも、その勇気を振り絞っての心からの声に、ルーチョはきっと心の奥深くに響くものを感じ取った。

そして、その瞬間、世界の広さを改めて実感し、自分だけが辛いのではなかった、心強さを得たのだと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外児童書
感想投稿日 : 2022年2月11日
読了日 : 2022年2月10日
本棚登録日 : 2021年7月3日

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