こんにちは!わたしのえ (ほるぷ創作絵本)

  • ほるぷ出版 (2020年7月20日発売)
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本棚登録 : 481
感想 : 27
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いわゆる、フィンガーペインティングや、手足形アートといった、自らの身体を使って、心のままに絵を描くことの楽しさを教えてくれる絵本なのですが、それは感覚的に楽しいだけではなく、ちゃんと根拠もあるんだよといった、説得力を思わせる点に、私は斬新さを感じました。

例えば、最初に「ぐっちょん!」としてから、筆を動かしていくだけで誕生する『ギザギザのいきもの』は、それだけで蛇や竜、あるいは雄大な川の流れにも見えてくるし、筆が「もっと、もーっと おおきく!」と呼びかける描写が、描き手の女の子の気分の高鳴りを表しているように思われる中で、今度は筆をぐるぐる回している絵に、『いろがわらう』と書かれているのを見ると、確かに、様々な形の丸たちが笑っているように見えてきて、たったこれだけのことでも、絵の感情を表現出来るのだなと、改めて、絵はこうあるべきといった型なんて、無いことを実感いたしました。

また、フィンガーペインティングのように、手が筆になるシーンや、足に絵の具を塗るシーンは、その部分を思いっきり拡大して描くことで、物語にメリハリを付けるだけでなく、そこから新たな絵が生まれてくる歴史的瞬間と、それを為しているのは人間の身体の一部なんだという素晴らしさを、読み手にも是非感じて欲しいと思わせるものがあり、読み聞かせされているお子さんは、思わず、自分もやりたくなる気持ちにさせられるのではないでしょうか。

そんな絵に対するハードルを低くさせて、絵を描くことに前向きな気持ちを抱かせる本書は、明朝体の擬音も楽しい、最初から最後まで女の子の感じるままに、自らが絵の一部になったかのような躍動感に溢れたストーリーも爽快な中で、『まっしろの まんなかに いろが うまれる』や、『みんな わたしから うまれてくるんだ』といった思いには、『まずは始めてみないと、何も生まれてこない』ことを教えてくれているようでもあり、改めて、はじめの一歩を踏み出す勇気って、怖いけど大事なんだなと感じました。

それから、女の子ばかりに注目が行きがちな中、彼女の描いた、無秩序で複雑に重なり合う、混沌とした色の洪水を見事に描き上げた、「はた こうしろう」さんの、画力の素晴らしさも印象的だったことを、最後に記しておきますが、この方、この前読んだ、「はるにあえたよ」の絵も描いてるんですよね。最初、あまりに絵のタイプが違ってたので気付きませんでしたが、やはり絵描きさんは凄いですね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 絵本
感想投稿日 : 2023年5月3日
読了日 : 2023年5月3日
本棚登録日 : 2023年5月3日

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