塀の中の美容室 (ビッグコミックススペシャル)

  • 小学館サービス (2020年8月28日発売)
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本棚登録 : 180
感想 : 17
5

漫画読みとして、自信をかなり持って、これは良い漫画だ、と他の漫画読みに勧められる
表紙を見れば、勘の鋭い漫画読みなら、なんとなく察しがつくだろうが、実に心優しいストーリーだった
胡散臭い言い方と捉えられるだろうが、読むと、人間に対しての期待や希望を捨てずに済む
少なくとも、私は、人は気持ちさえ切らさなければ、やり直す事が出来るし、やり直していいんだ、と思えた、この『塀の中の美容室』を読んで
ざっくり、中身を説明すると、軽いとは言い難い、とある罪を犯した女性が、血に濡れ、重い罪の枷を付けられた手に、「美容師」と言う資格、職業、そして、矜持を得て、心を再生していき、更生するチャンスを自分で掴んでいく、そんなストーリー
所詮は、作り物のストーリーだ、と貶す者もいるだろうが、そういう奴は、罪を犯しても反省せず、真っ当に生き直す事も出来ない、可哀想な奴だ、と勝手に思う事にしているので、この『塀の中の美容室』がバカにされても怒る気にならない
優しくて、暖かくて、けど、甘過ぎはしないストーリーに、小日向先生の柔らかい絵がよくマッチしていて、より読みやすくしてくれている
何様、と言われそうだが、こんだけの内容を、よく、この一冊に見事、入れ切ったものである。こういう話を纏めて、整えるセンスが、私はまだまだなので、実に羨ましい
どんな人に読んでもらいたいのか、と聞かれると、少し迷うが、やはり、色んなことが悩みの種になっている学生に読んでもらいたい、漫画の力を信じている人間としちゃ
この『塀の中の美容室』が肩の荷を軽くしてくれたり、背中をそっと押してくれたりするか、それは判らないけど、自分が今、立っている場所くらいは教えてくれ、なおかつ、自分と見つめ合う余裕を与えてくれるはずだ

この台詞を引用に選んだのは、グッと来たので
綺麗事かもしれないけど、あながち、間違っている訳でもない
世の中、多くの事に手を出し、どれも上手く出来る、器用な人間ばかりじゃない
確かに、やる事なす事が裏目に出て、落ち込みたくなる日も、人生にはある
ただ、いい日だってやって来る。来ないなら、こっちから行くか、引っ張って来ればいい
今の自分に出来る一つの事から、コツコツと熟していく、それも成長していく方法だ
出来る、を一つずつ増やしていけば、いつか、出来ない、も減っていく
そうしたら、きっと、苦しい時に泣くばかりじゃなく、笑える強さも得られる気がする
人生、悪い事ばかりだ、と思っていたら、いつまでも良くなったりしないんだから
動き出さなきゃ始まりませんからね、なんにも
「ひとつ、何かにつまづくと、いろんなことが連鎖して、ダメになってしまったりして。それで、何もかもうまくいかない時に、一度に全部考えると、余計にこんがらがってしまったりして・・・だから、逆に、とりあえず、ひとつだけ決めて、頑張ってみたら、他のことも、また連鎖して、いい方向に進むような・・・そんな気がします」(by小松原葉留)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 青年漫画(小学館)
感想投稿日 : 2020年9月13日
読了日 : 2020年9月13日
本棚登録日 : 2020年9月13日

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