江戸遊里盛衰記 (講談社現代新書 1224)

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  • 講談社 (1994年10月1日発売)
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『色道大鏡』という奇書がある。世は、江戸時代、寛永。著者は藤本箕山(ふじもときざん)。

1626年に生まれた当時随一の教養人だ。19歳の頃から40年という歳月を費やして、実際し遊里に足を運びまとめあげた。

現代になぞらえれば、全国の風俗街に足を運び、自ら体験しレポートとしてまとめる
そんな力業である。つまり、業の深い好事家中の好事家である。

本書、『江戸遊里盛衰記』はまず、『色道大鏡』の紹介で始まる。
著者はこの書物をベースにまず問題提起をする。

それは、都市部ではなく、『色道大鏡』でもかなり漏れている地方遊里にこそ
歴史に生きた人々に内在する感情や実態を浮き彫りにできるのではないかという考えだ。

著者の徹底した取材による、紀行文であるが、登場する遊里は遊里とは結びつかない町もあると思う。1958年の売春防止法後は、消え去った場所も多い。

しかし、今は亡き遊里を旅し、どんな町なのかを自分の目で確かめたくなる。
そんな行動を促す魅力を本書は持っている。地図を見ながら読むとよりいっそう楽しめる本である。

また、遊里の在り処に港町や鉱山が多いことは非常に興味深い事実である。
大漁や貴重鉱物の発掘に経済が沸く場所に遊里ありといってよいだろう。

裏話も興味深い。
税金の約2割を遊里からの上納金に頼っていたエリアもある。
伊藤博文や高杉晋作など維新志士の会合の場になっていたという事実も面白い。

一方で遊里の負の側面から目を向けようというのは著者の一貫した主張でもある。そもそも、遊女の発祥は実は平家滅亡にあるという説もある。

つまり、身を持ち崩した官女たちが生き残っていくために春をひさぐ道を選んだというもの。遊里が出来上がった背景にはどうにも這い上がれない貧困があったと著者は強く主張する。

厳しい現実から目をそらさない人を慮る気持ちに裏打ちされた力作である。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年11月11日
読了日 : 2017年11月11日
本棚登録日 : 2017年11月11日

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