“「どうして勝てない気がするの?」
「……なんていうか、『武器』が見つからないっていうか」
幸宏は美冬を見る。思いのほか真剣な表情で彼女はこちらを見ていた。
幸宏は「武器」について悩んででいることを美冬に話してみる。
「……そうだね、勘は『武器』にならないと思う」
話を聞き終えると、美冬はポツポツと、考えながら言葉を紡いだ。
「多分、それは『盾』だよ」
「『盾』?」
幸宏は思わぬ言葉に聞き返す。
「自分を守るもの。……決め手にはならないけど、ギリギリで支えてくれるもの、かな」
「僕の『直感予測』が?」”
階段部の次期部長になるのは誰なのか。
幸宏はどうなっているのか。どう変わっていってしまうのか。
“井筒目からしても、神庭の走り方は異様だった。自棄になるような要因は何もないはずであり、そもそも自棄になっているとは思えない。冷静さを欠いているとも思えなかった。むしろ、非常に冷静に――
歪んでやがる。
井筒にはそう見えた。神庭は歪なままに、それを極めようとしている。少なくとも井筒たち三人とは別の感覚で走っている。
それならそれで、面白い勝負ができそうだけどな。
神庭の体が壊れてしまわないか。それだけが心配だった。”
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
文庫本
- 感想投稿日 : 2010年10月6日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2010年10月6日
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