7人のシェイクスピア 3 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

  • 小学館 (2011年1月28日発売)
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感想 : 31

2巻に引き続き3巻も夢中で読みました。

彼らとの共同生活に慣れてきましたが、屋敷の外に決して出たがらないリー。
中国人コミュニティで受け続けた過酷な仕打ちが、小さな彼女の悲しいトラウマになっています。

リーは、イギリス人以上に目がパッチリした美少女に描かれていますが、考えてみたら彼女は生粋の中国人なので、もっとアジア人ぽい顔でもよかったのでは?と思います。
リアルを追求したら、ミステリアスなヒロインの価値が薄れてしまうのでしょうか。

彼女の傷をえぐらずに、そっとしている男性3人。
さらに子犬をプレゼントしてあげるなど、細やかな気配りと愛情をかけています。
ミルのかいがいしさがあいかわらずで、おじさんなのにかわいいキャラクター。
イギリス人なのに、弁髪なのがちょっと不思議です。

リーを少年風に男装させて、初めて外の市場へと出かける彼ら。
中国人を全く見かけず、チャイナタウンが大雨ののちに消滅したことを察する彼女。
人柱的な仕打ちを受けたことで、ある意味、たった一人だけ助かったともいえます。

この作品では、月が象徴的に扱われています。
リーの芸術の才能を知ったランスは「黒の女神」と彼女を呼びます。
なにかキーワードとなっていくのでしょうか。

クールなワースも、彼女からの詩で涙を流すほど、心を揺さぶる詩の才能を持つリー。
この巻の見せどころは、ギルド同士の芝居の競い合いです。
当時の芝居の臨場感がとても出ていました。
これが、演劇のはじまりなんですね。ヴィヴィッドな歴史書を読んでいるような感じ。
13行詩というものがなかった時、リーの書いた愛のソネットを初めて聞いたら、それは深く感動するはずです。

大学出を誇るライバル、マルタとランスの、恋のさや当ても加わって、大きな争いになります。
はじめは二人の男を手玉にとっていたようなアネットですが、ランスの詩で彼に恋をしてからは、とてもかわいらしい乙女に。
だからこそ、最後はかわいそうでした。
もて遊んだつもりがもて遊ばれた、といったところでしょうか。

リーの才能に導かれるように、ロンドンで芝居の脚本を書きたいと願うランス。
リーも、これまで周りになじられ続けてきた自分の予見能力を、ランスにはじめて長所だと言ってもらいます。

大きく話が動いていく予感。
ランスとワースの深い友情も感動的。
と、ラストシーンでえっと思う意外な事実が判明しました。
なんと、リー以外の3人の男性は、それぞれが偽名で生きていたのです。
なぜ?どうして?
ミルさえも?
でも、その兆しはありました。ミルは、リーと同様、ほとんど屋敷の外に出ずに過ごしています。
聖書を深く信仰しているようなので、恐らくは、イギリス国教会が禁じているカソリック教の敬虔なる信者なのでしょう。

ジョン・クームってだれ?実在したのかしら?
続きがとても気になります。ああ、話はどう進んでいくのでしょう。

ますます謎めいていくストーリーに引き込まれました。これは面白い作品。
目下、私が続きを待ち焦がれる作品の中で、5本の指に入ります。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: comic
感想投稿日 : 2011年8月19日
読了日 : 2011年8月19日
本棚登録日 : 2011年8月19日

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