ナンシー関 永久保存版: トリビュート特集 (KAWADE夢ムック 文藝別冊)

  • 河出書房新社 (2003年2月1日発売)
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感想 : 10

ナンシー関については、ほとんど知りませんでした。正直、田口ランディとごっちゃになっていた位です。
以前、訃報を聞き、彼女が消しゴム版画家で、毒舌TV評論家だということを知りましたが、それ以上の情報も持っていなかったため、このムックを読んでみました。

彼女に関するトリビュート特集なので、さまざまな芸能人や文筆家が彼女に関しての寄稿がまとめられたもの。
段分けされ、けっこうな文章量となっています。

経歴や素性がわからなかったため、怖そうなイメージがありましたが、かなり純粋な人だとわかりました。
芸名のようですが、決して芸能人ではなく、あくまで一視聴者として、ブラウン管の向こうの芸能界を批評し続けた人だというところに、姿勢の一貫性を感じます。

何より、版画のクオリティの高さには驚きました。決め台詞が文字として入っているという技巧の高さには脱帽です。
ナンシーという名は、本名の直美からで、本人ではなくいとうせいこうがつけたというのも初耳でした。
いとう氏がプロモーターだったわけですね。
ほかにリリー・フランキーやみうらじゅん、山田五郎にテリー伊藤に松尾貴史などが寄稿しており、(なるほど、彼らと同じサブカル系列の人だったのか)と理解しました。
どの寄稿からも、みんなにとても愛された人だということが伝わってきます。

青森出身ということも驚きです。
芸能情報に詳しいため、てっきり都民かと思っていたので。
逆に、青森は放映番組が少ないからこそ、芸能に飢えており、情報通になるのだという説明がありました。
一般人なら見逃したり、聞き流してしまうような細かいところに鋭い視線を投げかけるところは、確かにそうかと思います。

日本を代表する版画家、棟方志功と同郷人だという誇りを持っていたという彼女。
確かに、若干違いはありますが、彼の系列を引いている人かもしれません。

これまで、彼女のような存在はなく、これからもなさそうな独特の立ち位置を築いていた彼女。
その後、彼女の存在に匹敵する技量を持ったポストナンシーが現れないのは、芸能界にとっても視聴者にとっても残念な限り。
その突然すぎる死は、確かに深く惜しまれるべきものだったと、このトリビュートを読んで実感しました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 作品論・作家論
感想投稿日 : 2012年1月30日
読了日 : 2012年1月30日
本棚登録日 : 2012年1月30日

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