逃避めし

著者 :
  • イースト・プレス (2011年7月12日発売)
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感想 : 73

話題の本と聞き、タイトルと著者名に非情にインパクトがあったため、読んでみました。
著者のことは全く知りません。著書も、一冊も読んだことがありませんでした。

締め切りに追われる人気漫画家の、現実逃避の食事だと、タイトルから簡単に想像がつきました。
パラパラと本をめくってみた写真を見て、大ざっぱな男料理かと思いきや、だしやスパイスなどになかなかこだわりを見せて、意外にも(失礼)きちんとした料理を作っていることが新鮮でした。
妻の出産後は、家事を担当しているというのがすてき。

子供の頃の思い出のノスタルジーで、ジャンクなものを作る時もありますが、基本は化学調味料を使わず、自分で下味を作っているこだわりぶり。
ただ、食材や調味料の量は全く問題にしておらず、原材料も食品名だけで、分量や焼く時間など、まったく記載されていないのが、男の人らしく豪快だなと思います。

調理だけでなく、小腹が減った時用に仕事場にこどもカレーを常備していることも語られていました。
油脂類少なめのため、非加熱でも食べられるのだそうです。
「奥州しょうゆ豚弁当」なるものを作った上に、駅弁っぽく包装紙まで自作したという所がさすが漫画家。

池波正太郎の著書『食卓のつぶやき』、水上勉の『土を喰う日々』、壇一雄『わが百味真髄』、子母澤寛『味覚極楽』など、食エッセイものの本を多く読んでいることが伺えます。
江戸時代の料理書『豆腐百珍』を読んでいたり、故・丸元淑生のレシピも暗記していたり。
今の愛読書は、農文協刊の『聞き書ふるさとの家庭料理』と言うから本格的。

大石内蔵助が討ち入り前に食べた鴨入り卵かけごはんのところでは、「私以外でも作ってみた人は多いことだろう」と書かれていましたが、やはり男性でも、そういったくだりを読むと、自作したくなるものなんですね。
『ひとまねこざる』は、昔の巻では、こざるのジョージがいたずらしたのは、スパゲティーではなくうどんと訳されていたと知りました。

はじめ、伊藤理沙先生と称して、らっきょうや梅干しの話が紹介されており、仲良しかしらと思って読んでいたところ、どうやら伊藤氏は著者の奥さんだということに、途中で気付きました。
ちらし寿司の章で語られた、お雛様の刀へのこだわりのエピソードが、楽しくて吹き出しそうになりました。

原料高により、ちくわの穴が広がっているという2008年の悲しいニュースも、この本で知りました。
手回しミンサーを、ミンチではなく、ずんだを砕くのに使っているというのが新しい感じ。
ピーマンの味噌汁は、これまで考えたことがありませんでした。驚きの組み合わせです。
そうめんのめんつゆに目玉焼きを入れたそうめんというのも初めてです。

また、東北でハモといったらアナゴのことだという、微妙な違いも知りました。

トマトと納豆を混ぜただけのトマト納豆、今度試してみたいと思います。
また、味噌焼きおにぎりを丸めるのが面倒ということで、グラタン皿に入れて焼くというシンプルなアイデアに、真似をしてみたくなりました。

著者は、相当魚焼きグリルをフル活用しています。
次回は魚焼きグリルを使った料理本でも出せそうです。
また、ホタテの貝の殻をコンロに掛けて、鍋を楽しんだ章を読んだら、誰でもやってみたくなることでしょう。

気軽に作れそうな、身近な食材に簡単(適当)すぎる調理法が記録されており、自分でも応用できそうだと思うものがいくつもありましたが、何よりも収穫だったのは、かつて自分が持っていた猿のぬいぐるみが「ぴっきいちゃん」というキャラクターだとわかったことでした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 美容・料理
感想投稿日 : 2012年1月23日
読了日 : 2012年1月23日
本棚登録日 : 2012年1月23日

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