武士のメシ

著者 :
  • 宝島社 (2012年2月9日発売)
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感想 : 15

語呂がいいなあ、とタイトルに感心し、表紙の料理写真の美しさに読む気をかきたてられました。
戦国時代の武士が何を食べていたのかと考えると、映画か大河ドラマの食事シーンが思い出されます。
著者は、NHK大河ドラマの監修に携わる食文化研究家。

名だたる武士がどんな食事をしていたかを、時代考証に基づいて徹底的に再現しています。
気がつくと、戦で命を落とすことなく生き抜いた武将たちは、当時にしては長寿の人が多いもの。
伊達政宗は70歳、徳川家康は75歳、宇喜多秀家は84歳、毛利元就は75歳、鍋島直茂は81歳。
武将ではありませんが、天海に至っては、108歳と言われています。

ここに料理の影響があるとする著者。
一人ひとりの武将に焦点を当てていくと、確かにそれぞれ、食へのこだわりを持つ人ばかりでした。

たとえば濃い塩味好きの信長は、怒りやすかったとのこと。塩味が血圧をあげていたのだそうです。
魚類が好きな秀吉は、アミノ酸(トリプトファン)と尾張の豆味噌(トリプトファン)を多くとったため、幸せホルモンと呼ばれる脳内物質のセロトニンが多い、明るい性格だったそう。

関ヶ原で敗れて八丈島に流刑となった宇喜多秀家は、不遇の中、太陽の光をたくさん浴びてセロトニンを受け、さらに島の山菜などで健康な食生活を送ったそうです。

一人ひとりの食の特徴を知っていくと、たしかにフード・パワーは無視できないものだと納得できます。

現代は生存競争の激しい乱世で、戦国時代と似ているため、食を選んでいくべきだとする著者。
歴史上の武将の例があるだけに、サバイバル料理としての勧めも説得力があります。

紹介された23の食事はどれも美しく調理され、吟味された器に盛られていて、どれも絵になるものばかり。
すべての料理のレシピが付いているのが、うれしいところです。
武将に関する食のエピソードも一緒に紹介されており、名だたる武将がこういったものを食べていたのだと思うと、いっそう味わい深く感じられそう。

もちろん当時は、洋食などまったくない、すべて和食のもの。
長寿を導いた健康的な食材で作られた食事の数々は、どれも食べやすそうで、見ているうちにおなかが空いてきます。
食は、時代が進むにつれてどんどん工夫を凝らしたものになっていきますが、合戦に向けた体づくりの糧とみなされていた戦国時代の食事には、シンプルな効果が詰まっていると感じました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 美容・料理
感想投稿日 : 2014年4月8日
読了日 : 2014年4月8日
本棚登録日 : 2014年4月8日

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