わたくし的読書 (MF文庫 4-61)

著者 :
  • KADOKAWA(メディアファクトリー) (2003年2月1日発売)
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本棚登録 : 164
感想 : 23

著者がこれまで読んできた102冊の本を、ジャンル別に3冊ずつ取り上げて紹介してくれています。
推薦本ものは割と読みますが、マンガ家のものは初めてです。

マンガ家と言ったら、マンガをたくさん読んでいる人というイメージを持っていますが、この人は書物をたくさん読んでいます。
家の父親の本棚の中身を片っ端から読んでいったという、根っからの文学少女だったようです。

3人姉妹と3人兄弟とでは、物語の性質が全く異なるという意見がおもしろかったです。
「若草物語」のベスや、「細雪」の雪子が採り上げられており、確かに世にある血縁ものは、姉妹と兄弟を入れ替えることはできないような話ばかりだなあと思いました。

中でも「哲学」項目が気になりました。
「ソフィーの世界」「イリュージョン」「星の王子さま」の3冊がピックアップされています。
直接的な哲学本とは言えないものばかりなので、チョイスの独特さに引かれました。
さらに、著者のコメントとして“「モモ」を外したのは、最後が死なのを選んだため”とあって、はっとしました。
そういえば「ソフィーの世界」の最後には、突然どんでん返しがあり、死と永遠の話になっていましたね。
「イリュージョン」好きの私としては、彼女のチョイスにぐっときました。

本の紹介の中に、パリの町の紹介などもちょこちょこと入っており、推薦本紹介の本に一緒に収録されているのが、謎だったりします。

日本のマンガを置いているトンカムという書店訪問記もありました。
先日読んだ『ル・オタク』で知った本屋です。
フランスは、外国の中でもとりわけ日本アニメに興味と理解を持つ国だと思っていましたが、『もののけ姫』は残虐シーンが多いため、上映が許されていないと知り、驚きました。

ほかに、フランスマンガのバンド・デシネの仕事場を訪ねたり、パリのリアルジゴロを見つけてインタビューをしたりしており、興味深く読みました。
ジゴロって、本当にいるんですね。
今ではネットに募集が載っていたりするとか。
ジゴロ卒業後はゲイになる人が多いそうです。なかなかリアルなインタビューでした。

一つ難点を上げるとすれば、本を縦にしたり横にしたりして、向きを変えて読まなければならない装丁が、読みづらく感じました。
推薦本コーナーとそれ以外のコーナーを区別したかったのか、コマ割の関係なのか、わかりませんが、なんとか全て統一した普通めくりにして、収録してほしかったです。

独創性が必須のマンガ家だからといって、奇をてらわず、真面目に本紹介をしてくれる様子に共感を持てる本でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 作品論・作家論
感想投稿日 : 2010年7月5日
読了日 : 2010年7月5日
本棚登録日 : 2010年7月5日

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