身元不明の少年の保護者を探して、カレー屋のアルバイト学生である主人公、店主姉妹、その友人の男性が奮闘する話。
登場人物それぞれが家族にかかわる問題を抱えている。
文章で時々読みにくいところがあった。p171以降、真奈美の母親が登場する場面。同じ人物が「女性」「母親とおぼしき女性」「母親」と色々な呼び方。意識を失っている人物が真奈美であることは台詞の中だけで示されるので、たとえばp175「恐る恐る女性に声をかけた」の女性が誰をさすのか混乱した。さらにp230の病院の場面では、同じ人物の姓が会話中で示され、その後は文中の呼称も「安井」になるのだが、これも頭がすぐ切り替えできなかった。主人公にとってよく知らない人物である以上仕方ないとは言え、ぼーっと読んでいたからだろうか。
また明が時々耳が聴こえなくなるという設定も、「で、今はどちら?」と時々気になった。特に当人に聞かせたくない話をしている場面では、何がきっかけで聴力が戻るか分からないと思うと読んでいる方が落ち着かない。
ラスト近く、主人公の進路で司書の話が出てくる。
「本当にこのまま地元に帰って司書になっていいのだろうか。(中略)母親や祖父が、地元に帰ってきなさい、司書の仕事を用意しておいてあげるよ、そう言ったから、こちらで就職活動もせず帰ることに決めた。その司書の職場というのは、祖父の会社が作った五稜郭戦争にかんする資料館の中にある図書コーナーでしかない。図書費はふんだんに用意するから地元民も観光客も来たがる図書コーナーにするように、と言われているけれども。(p305)」
ストーリー上仕方ないのだが、お仕着せのつまらない進路という扱いになっているのは個人的には少し寂しい話。
- 感想投稿日 : 2022年3月20日
- 読了日 : 2022年3月19日
- 本棚登録日 : 2022年3月20日
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