かぜの科学:もっとも身近な病の生態 (ハヤカワ文庫 NF 421)

  • 早川書房 (2014年12月19日発売)
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感想 : 33

風邪についての科学読み物。
風邪と呼ばれる病気の原因となるウィルス、感染経路、臨床実験の様子、数々の民間療法等が軽妙な文体で書かれる。新型コロナ禍下で読むにはふさわしい。もっとも本書で主に取り上げられているのはコロナではなくライノウィルスだが。
これほどポピュラーな病気でありながら、いまだに未解明のことが多いのに驚く。「寒いと風邪を引く」といった常識でさえ、確かな根拠は無いらしい。ビタミンCやチキンスープ、諸々の民間療法もほぼ根拠なし。そもそもすぐ治ってしまうので自然治癒か民間療法の効果か分からず、確かに効果の認められる薬でも症状が出た時には服用しても効かないことが多いというのは厄介だ。
そしてそれをいちいち検証するための実験の様子も面白い。よくある病気だけに、被験者は条件コントロールのため隔離生活を強いられる。ホテルを借り上げ、鼻水の量を測定するために使用済みティッシュの重量を測る等、真面目な実験なのだが真面目なだけにどこかユーモラスでもある。
風邪のつらい症状の大部分は自身の免疫によるアレルギー反応だという指摘も興味深い。新型コロナで亡くなった人の死因もサイトカインストーム(免疫暴走)だという。もちろん免疫が有害だということではないだろうから、この機構をオフにしたらもっと致命的なことが起きるのだろう。ストレスや睡眠不足は、免疫の働きのコントロールを悪くするため風邪にも有害というエビデンスがあるようだ。
厄介なウィルスだが、付き合っていくしかないという結びが前向きだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年7月23日
読了日 : 2020年5月31日
本棚登録日 : 2020年4月6日

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