イヴの乳: 動物行動学から見た子育ての進化と変遷

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  • 東京書籍 (2005年1月1日発売)
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感想 : 3
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 子育てをするのは人間だけではない。昆虫、鳥類、ほ乳類の子育て・家族形成について興味深いトピックを紹介していく、楽しい読み物。ライオンやチンパンジーはなぜ子どもを殺すのか、子育てに協力的な雄と非協力な雄の違いはどこにあるか? いろんな事例をとりあげつつ、最終章で著者は、人間の家族・子育て戦略について、今までの事例を振り返りながらアドバイス。それ単独で読むとなんだかおやじっちいアドバイスではあるのだが、さんざん動物の事例を見ているので、なかなかにやりとさせられる。(そのまんま話すと、フェミ系な人からは受けが悪いかも、要注意)

 一例として「おしどり夫婦」は、妻の浮気をおそれるあまり、ストーカーと化した雄の哀れな姿だった、というのがおもしろかった。なんせ一夫一妻制の鳥類でも、じつは夫以外の精子による卵が半分がたあるのだとか。そりゃ疑心暗鬼にもなるというもんだ。
 雄は、生まれてくる子が自分の遺伝子を引いているかどうか、わからない。それを確実にするには、雌がたった1度でも浮気でもしないようにストーキングするしかない。雄は雌の不貞をなによりもおそれる。
 一方雌は、自分が産む子に自分の遺伝子が入っているのはわかっている。だから、雌が本当におそれるのは、雄の浮気ではなく、雄が経済的・時間的資源を浮気相手のほうへ振り向け、本来自分が得るはずの利益が得られないことのほうだ。
 なんだか、人間にも当てはまるような気がしてくるでしょ?

 語り口も平易で、誤解を恐れず単純化しようという度胸が買える。利己的遺伝子説について少し解説が多いほうがよりわかりやすくなるのでは、とも思うが、そんなん気にしなくても面白くよめるだろう。
 教訓としてもエロ話(?)としても「使える」例が多いという点で、いい点をつけたくなってしまう本。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 科学
感想投稿日 : 2014年3月30日
読了日 : 2005年3月30日
本棚登録日 : 2013年5月19日

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