アニメと日本文化 (新典社選書 114)

制作 : 田口章子 
  • 新典社 (2023年2月10日発売)
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本書は、アニメと日本の伝統文化との深い関わりを、様々な角度から掘り下げた貴重な一冊です。

まず総論では、諏訪春雄氏がアニメの根源を絵画表現に探り、日本文化における「型」の重視との関連を指摘しています。水木しげるや宮崑駿作品の分析を通して、霊魂論や女神信仰などの伝統思想とアニメの親和性も論じられています。

各論では、歌舞伎、文楽、絵入本、浮世絵などの近世文化と、アニメがいかに通底するかが具体的に示されています。絵尽しや挿絵におけるアニメーション的手法の指摘は目新しく、アニメ文化の源流を視覚的に追体験できる好例と言えます。

著者陣には、近世文学・芸能の第一線の研究者が名を連ねており、伝統文化への深い造詣が随所に窺えます。個々の論考はいずれも説得力に富み、アニメと日本文化の連関に新たな視座を切り拓いています。

一方で、アニメが西洋の影響を強く受けていることも認められ、その中での日本的要素の位置付けも問われています。伝統の継承と創造のあり方への示唆に富む好著と評価できるでしょう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本文化
感想投稿日 : 2024年4月4日
読了日 : 2024年4月4日
本棚登録日 : 2024年4月4日

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