美術家・奈良美智のエッセイ…なのだけど、blogに書かれた日記を集めた本だから、わりとラフな雰囲気。
かしこまって“表現”についてを語っているのではなくて、日々の生活や創作活動のなかで感じたことが書かれていて、まったく飾り気はないのに鋭く心に残る言葉が(私にとっては)たくさんで、久々に付箋だらけの本になりました。
創作を生業にしている人間ではなくても、普段感じることはいろいろとあって、その中から得た思いを誰かとの会話で話すことってあると思う。
そして、その人的には何の気なしに話したことが、誰かにとっては何かを深く考えるきっかけになったり、生きる上でのヒントになったりする。
この本は、そういう感じ。
誰かのblogを覗き見して、自分にとっては大事な言葉を頂いて帰ってくるような。
「弱さを持ったまま強くならなければいけない」
「意味のない怒りを捨てよう。しかし、怒りの気持ちを忘れずにいよう」 etc…
最近ならば私は2012年の展覧会を観に行ってるんだけど、そのときにすごく強い力がアンテナに訴えかけてくるような感覚があって、思わず泣きそうになった。知識も何もないけれどそんな風に感じる、そういうことってきっと大事なことなんだと思う。
とある像の前で母(一緒に観に行ってた。母も美術の知識はまったくない)が一言「これ、怖い」って呟いて、タイトルを見たら「ホワイトゴースト」だったということもあって、そういう素人のインスピレーションって侮れないとも思った。
帰り道で「今まで奈良さんの作品が何で人気なのかいまいち分かってなかったけれど、今日何となく分かった」とも言ってて、表現されたものが持つ無言のエネルギーみたいなものを感じた記憶もある。
そして私や母がそんな風に感じた理由が、この本を読んで少し分かったような気がする。
弘前出身の方なので弘前についての記述も時々あって、あぁわかる…と思うことも。
一応“文化の街”って呼ばれてるけど、やはりメインストリームではなくて、でも何かひっかかるものがある感じとか。
この本は折にふれて開くことになるかもしれない。
- 感想投稿日 : 2014年12月4日
- 読了日 : 2014年12月4日
- 本棚登録日 : 2014年12月4日
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