素顔の伊達政宗~「筆まめ」戦国大名の生き様 (歴史新書)

著者 :
  • 洋泉社 (2012年2月6日発売)
3.47
  • (4)
  • (4)
  • (7)
  • (0)
  • (2)
本棚登録 : 67
感想 : 9
3

自筆の手紙を駆使して人心掌握に成功した猛将。政宗は、武勇の裏で家族、家臣、友人との意思疎通を大切にした。

本書は、仙台市博物館に学芸員として勤務した著者が伊達政宗の素顔に迫った本である。全体的に、政宗贔屓の観があるが、それを踏まえても面白い本である。自分的には、伊達政宗というと大河ドラマの渡辺謙のイメージが強く、ギラギラした印象があった。
本書を読むと、独眼竜政宗は、結構史実に忠実に作られている事がわかる。(唯一気になったのは、ドラマの中では、伊達成実に子供がいたが、本書によると子供はいなかったのだという事。)

小田原参陣前の実母による政宗毒殺未遂事件については、元禄16年に編纂された伊達家の正史「貞山公治家記録」に詳しいそうであるが、著者は、伊達家の一本化を図った政宗と母の共謀で、手討ちしたことにして密かに逃がし出家させたと考えている。(東京都あきる野市、大悲願寺の歴代住職のなかに法印秀雄という人物がおり、寺の記録によると、政宗の弟とされている事。正史の記述には、義姫の出奔時期につじつまが合わない点があるそうである。)今となっては、証明不能な問題であるが、考え方としては面白い。正史が後世に編纂されたものである事を考えると、疑問の余地はあると思う。

もうひとつ、関ヶ原の合戦時の百万石のお墨付きの問題がある。以前、読んだ文の中で、お墨付きは、領土の切り取りを保障したもので、政宗が自力で上杉領を占領することが出来なかった(白石城のみ攻略)以上、反故にされても仕方ないという説があり、納得したものであるが、著者は、反故にした理由として、家康の政宗に対する警戒心をあげている。(味方には付けたいが、強力にはしたくない)上杉氏が米沢領を安堵された事や相馬義胤が改易を免れたのは、政宗を封じ込めるためという説は面白い。(相馬家が領土安堵されたのは、政宗のとりなしがあったという話を読んだことがあるが、本書では、反故にされたお墨付きの代償として空き地となる相馬領を狙っていた事が窺える)
著者は、関ヶ原合戦での政宗の働きを十分評価に値するものだったとしているが、私としては疑義がある。和賀一揆の問題だけではなく、白石攻略後、上杉氏との直接対決を避けるような姿勢を考えると、最終的に、最上に援軍を送ったとはいえ、功績として、すんなり納得できないものがある。(上杉と伊達の戦力差を考えれば、やむを得ないとは思いますが)
とはいえ、のちに秀宗が取り立てられて、宇和島十万石を得る事を考えれば、幕府としても気を使っていた事がわかる。(この点を考えると、陰謀家であったゆえに、自業自得で報われなかったというイメージがあるが、まるっきりそうとも言えまい)

書に堪能で、茶道や香などを嗜む文化人であったことや、残された自筆の手紙から、家族、家臣、友人を大切にする人柄など、政宗の意外な一面を知ることが出来るのは面白くおススメである。

「伊達政宗、最後の日々」(小林千草著)や、「伊達政宗の研究」(小林清治著)を積読状態であるが、本書に続けて読みたいと思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史(戦国)
感想投稿日 : 2012年3月25日
読了日 : 2012年3月25日
本棚登録日 : 2012年2月6日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする